現在の生活費がわからないと不足額もわからない

さて、年金で生活費は足りるのか? 足りないとすれば、老後資金をいくら準備すればいいのか? それを知るためには、わが家の年金額と、現状の生活費を把握しなければ始まらない。

年金額については、社会保険庁で大体の額を調べられる。現状の生活費を調べるには、妻の協力が不可欠だ。

妻は家計簿をつけているだろうか。つけている場合は、すでに現状の生活費は把握できている。家計管理をきちんと行っている家庭なら、老後の生活にも安心感は高いといえるだろう。

家計簿をつけていない場合は、最近半年ぐらいの間に、生活費がどれぐらいかかっているかを調べてみよう。預金通帳を見れば、光熱・水道費や通信費などは、口座から引き落とされている金額がつかめるはずだ。カードを使った買い物も、明細書を見れば内容がわかる。食料品や日用品などにかかっている金額については、今後3カ月ぐらいの間に、アバウトでいいから把握できるよう、妻と話し合ってみよう。

生活資金の不足は妻の年齢で判断せよ
図を拡大
生活資金の不足は妻の年齢で判断せよ

現状の生活費と年金の見込み額がわかれば、ギャップがどのくらいあるかもわかる。現状の生活費から節約できる分を引けば、年金の範囲内で暮らせるかどうかが判断できるはずだ。年金額では足りないときは、毎月の不足額を12倍して年間の不足額を計算する。この年間不足額に必要な年数を掛ければ、生活費の不足額の総額が計算できる。あとは右の表の手順で退職時にいくら貯蓄があればいいかを計算してみるといい。要は、退職時に持っている資産で不足額を補えるか、または、いくら足りないのか、ということだ。

この際に、注意すべきポイントを挙げておこう。

(1)妻のほうが平均寿命は長いので、生活資金が何年分必要かは妻の年齢で判断する。現在、女性の平均寿命は86歳なので、86歳から夫が退職するときの妻の年齢を引いて計算するとよい。

(2)住宅ローンが残っている場合は、退職時の資産合計額からローン残債を忘れずに差し引く。

(3)住居費や旅行費用、レジャー費、医療費、冠婚葬祭費などの予備費、耐久消費財購入費、住宅リフォーム費用など必要な見込み額を見積もり、必要資金として予算化しておく。

(4)退職時に必要な額を準備するのが無理なときは、老後の生活費をもっと節約できないか検討する。また、レジャー費などの見積額を削減して、準備できる額の実態に近づける。

なお、現在の生活費と年金額とのギャップがあまりに激しいときは、今のうちに生活費を引き締めて、貯蓄を増やしたほうがいいのは言うまでもない。