メガバンクや地銀の「短プラ」とは何が違う?

それなら、「短期プライムレートも同じでは?」と疑問を覚える人もいるだろう。その指摘は正しい。基本的に、短プラのレートは、「金融機関が資金調達コストや市場の金利動向をもとに決定する」とされているからだ。

短プラは、期間1年未満の最優遇貸出金利のことなので、短期金利の影響をモロに受ける。つまり、その点で、前掲のネット銀行には「大した違いはない」という結論になる。

では、冒頭で紹介した、メガバンクや地銀の短プラも違いはないのかというと、様相は異なる。「実質的に違う」と言えるのだ(話は細かくなるが、重要なことなのでお付き合い願いたい)。

メガバンクや地銀の短プラは、8月以降の引き上げをみればわかるように、「メガバンクが政策金利の上昇幅と同じ幅を引き上げた後に、地方銀行が追随する」という構図になっている。

あたかも、政策金利に準ずる制度に基づいた金利のような印象を与えているが、そうではない。昭和の時代から、短プラが変更される度に何度となく繰り返されてきた光景で、銀行の“横並び意識”の産物である。

1989年以前の短プラは、政策金利だった公定歩合に連動していたので、メガバンクをリーダーとして、どの銀行も同じように変更していた。1989年以降は、市場金利を基に金融機関が決めるとされたものの(当時は「新短プラ」と呼ばれていた)、政策金利に連動する点は変わらなかった。

そして、金利のある令和になった現在でも、短プラを巡る銀行業界の横並び状態にまったく変化がないことが、今回の引き上げで改めて判明したのだ。

ネット銀行の引き上げタイミングをチェックすると

こうした「横並び短プラ」は、これからも、日銀が政策金利を変えるタイミングで変更されるだろう。また、金利正常化の過程では、政策金利が0.25%引き上げられれば短プラも0.25%の引き上げと、“幅”も同じになると予想される。

適用される変動金利は、各行で多少の違いはあろうが、引き上げ幅がそのまま反映されるところがほとんどではないか。

一方、ネット銀行の変動金利は個別判断によるので、これまでと同様、必ずしも政策金利の変更後、というタイミングではないと心得ておくべきだ。日銀のマイナス金利解除後のネット銀各行の変更は次のようになっている。各行が“独自判断”をしているのが分かる。

筆者作成

*基準金利とは、その名のとおり住宅ローンの基準となる金利。0.1%引き上げられると変動金利も0.1%上がることになる。