利上げの思惑が強まるだけで変動金利が上昇する可能性も
これまで述べてきたように、ネット銀行の変動金利は短期金利全般の影響を受ける。つまり、日銀が政策金利を変更しなくとも、短期金融市場で追加利上げの思惑が強まり、短期金利が上昇すると、ネット銀行の変動金利は引き上げられる可能性が高い。短期金融市場は、そうした思惑に対して敏感に反応するマーケットだからだ。
実際に、そうした動きを見せているのが楽天銀行である。日銀がマイナス金利を解除した今年3月末以降、短期金利の上昇を受けて、毎月、基準金利を引き上げている(4月+0.024%、5月+0.08%、6月+0.02%、7月0.01%、8月+0.04%、9月+0.111%)。
楽天銀行は、個人向け住宅ローンに関して、他の大手ネット銀行とは異なる戦略をとり、ローンの低金利競争から距離をおいている。信用リスクの低い顧客からきちんと収益を上げるという方針で、調達する短期金利が上がれば、その分、迅速に貸し出す金利も上げるというスタンスだ。
この楽天銀行の動きは要注目で、他のネット銀行の調達金利のコストも同程度上昇していると推測される。今後、さらに短期金利が上昇するようであれば、唐突ともいえるタイミングで引き上げに動くところが出てきてもおかしくはない。
変動金利型住宅ローンはこれからどこまで上がるか
では、肝心の変動金利はどこまで上昇するのだろうか。まず、日銀の政策金利について。エコノミストやシンクタンクの見通しでは、早ければ12月、遅くとも25年3月までには、政策金利を0.25%から0.5%に引き上げる、といった見方が増えている。短期金融市場も、25年3月までの0.25%利上げを、ほぼ織り込んだ金利を形成している。
そして、そこから半年ごとに0.25%ずつ引き上げて、26年の3月末頃には1%にする。それ以降は、しばらく1%をキープしつつ、日銀は景気や物価の動向を見ながら金利の水準を検討する――というのが大まかなシナリオだ。
これを前提とすると、ここから政策金利が0.75%上がるならば、ネット銀行の変動金利は1.0%程度上がる可能性が出てくる。現在、変動金利を0.4%で借りている人は1.4%程度になる計算だ。