築40年前後の家はより難しい状況に

そうした事情から、指定確認検査機関は、既存住宅の大規模修繕等の確認申請を受けたくないのが本音かもしれません。家の持ち主からすれば、受け付けてくれる指定確認検査機関探しにかなり苦労する事態に陥り、見つかっても審査期間が長引く可能性が高そうなのです。

そのため住宅業界では、既存住宅の大規模修繕等は一定期間、まったく行えない事態に陥ることが懸念されています。

第3の問題は、「検査済証」のない住宅の手続きです。

建築物の新築時には確認申請手続きを行い、「確認済証」が交付されてから着工します。そして建築工事が完了した際に、確認申請通りに工事が行われたことを現地で確認を受けて、「検査済証」の交付を受けます。

あらたに、確認申請手続きが必要な大規模修繕等の工事を行う際には、「検査済証」が手元にあることが前提となります。

最近の新築建築物は、「検査済証」の発行を受けるのが当たり前になっていますが、以前はそうではなかったのです。国土交通省によると、1999年以前は、「検査済証」の交付を受けていない建物が過半を占めています。フルリノベニーズが高い築40年前後の建物となると、「検査済証」がない住宅の比率は間違いなくさらに高くなります。

法適合状況調査のための時間も人員も足りない

大規模修繕等を行う建築物が建築時点の建築基準法令に適合していることを確かめる必要があるため、「検査済証」がないままでは、大規模修繕等のための確認申請を行うことはできません。図面が残っていなければ、現況の図面起こしからはじめて、法適合状況の調査を行うことが必要になります。

また、法適合状況調査の手続きは、その建物がある行政によって判断が異なっているのです。国土交通省が定めた法適合状況調査(検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン)に基づく運用をしている自治体と、そうではなく、一級建築士事務所による調査でよいとしている自治体等、対応が分かれています。

これまでは、普通の戸建住宅で、あらたに確認申請が必要な改修工事の件数はそれほど多くなかったため、法適合調査の手続きのニーズはあまりありませんでした。

ところが、今回の改正法施行で、これまでほとんどニーズのなかった法適合状況の調査ニーズが急増します。この調査ニーズの急増に、当面の間は、受け皿が足りない状況が続くものと予想されます。