朝日はインテリジェンス機関に近いところがある

【西村】それはとても異様な光景だな。私が新人だった頃も、キャップだったときも、そんなことはなかったけれど。NHKは待たないの?

【佐藤】NHKの若手は、遅れてきて、上司よりも先に食べます(笑)。

【西村】そうか(笑)。佐藤さんがそういう光景をよく見てきたということなら、ある意味朝日は永田町カルチャーを映しているところもあったのでしょうね。

【佐藤】そう思います。ただ上下関係が厳しい分、朝日の上司は部下がミスをしでかしたときに全責任を取ってしっかり守るよね。部下のせいにして尻尾を切るような真似はしない。徹底して下を守るカルチャーがある。そのあたりはインテリジェンス機関に近いところがあります。人がすべてなんだよね。だから、独自の掟はちょっと窮屈だけれども、そこにうまくはまれたらある意味、仕事はしやすい会社なんだろうとはずっと思っていたな。

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【西村】私は記者人生の3分の1を海外で過ごしていたので、どちらかというと、そういうカルチャーには浸かっていなかったんだろうね。だから今日佐藤さんから聞く話も、知っていることもあれば初耳のエピソードもある。

朝日の記者は「メモ」を流さないし、金を取らない

【佐藤】あとこれは西村さんもそうだけど、朝日の記者は「メモ」を流さないし、金を取らない。新聞記者は日々、政治家や官僚、捜査当局に取材して作成したメモを、キャップなりデスクに上げるんだけれど、メモは社内で共有されるから、ほかの記者が作成したメモでもコピーをすることができる。新聞社のメモの中には、週刊誌記者や政治家にとっては金を払ってでも入手したいほど価値があるものもある。それで、金に困った記者がメモを売るということもあって、外務省内でもメモが流通していることがあったのだけれど、朝日新聞の記者が流出させたメモを見たことがない。

【西村】それはそうですよ。賄賂や買収だもの。絶対にだめだ。

【佐藤】いや、メモを流させて金を取らせるって、われわれにとって重要な仕事だったんだけど――これ以上は差し障りがあるからいまはやめておこう。

【西村】じゃあもう少し場が温まってから(笑)。まあ、官僚や政治家のメモが週刊誌に流れたっていう話は珍しくはないよね。