新規加入者の45%が広告付きプランを選択

ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、Netflixは来年初め、これまで投資家に開示してきた四半期ごとの会員数と会員一人当たりの平均収益の情報提供を終了する。ユーザー数の成長鈍化を見込んだ措置とみられる。

新規ユーザー獲得のカギになるのが、安価な広告付きプランの導入だ。Netflixは2022年11月、広告付きプランを導入した。

Netflixのアメリカでの料金プランは、画質が中程度の「スタンダード」で月額15.5ドル(日本国内では1490円で提供)、4K高画質の「プレミアム」で23ドル(同1980円)となっている。「広告付きスタンダード」なら、月額7ドル(同790円)だ。広告付きの場合、アメリカの場合はスタンダードの半値以下となっており、日本でも大幅に安い。

広告付きプランは非常に好調だ。今年5月には、全世界で4000万人の月間アクティブユーザーを記録し、前年の500万人から大幅に増加した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、新規加入者数に占める広告付きプランの割合が、当該プランが提供されている国と地域において、45%以上に上ると報じている。

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広告単価で優位のNetflixだが…

しかし、状況は急速に変化している。業界メディアのストリーミングTVインサイダーは、Amazon Prime Videoの自動移行により、「動画広告のエコシステムは、一夜にして劇的に変わった」と指摘する。広告単価が急速に低下したのだ。

Amazonが広告導入地域のほぼ全ユーザー分の広告視聴枠を市場に放出したこと、さらには広告単価を競合他社よりも低く設定したことで、業界全体に大きな影響を与えている。これにより、Netflixを含む他のストリーミングサービスも、広告単価を引き下げざるを得ない状況だ。

米広告測定会社EDOのケビン・クリムCEOは、米芸能メディアのハリウッド・リポーターに対し、AmazonのCPM(広告を1000回表示させる料金)は50ドル程度(約7300円)との推算を示している。1年前にNetflixが広告付きプランを開始した当時と比べ、低い価格になっているという。

Amazonの殴り込みで「一夜にして激変」

なぜ、ストリーミング広告の価格破壊が可能だったのか。英フィナンシャル・タイムズ紙は、ネット小売りを本業とするAmazonだからこその措置だったとみる。

Amazonは既存の小売業の強みとして、ユーザーごとに膨大な量の購買履歴データを持っている。これをもとにPrime Videoの広告は、極めて高度なターゲット化を実現している。

「ファービー」などを製造する米玩具メーカーのハスブロは、イギリスでのテスト期間中、Amazonのデータを活用して子を持つ親をターゲットにした広告を配信した。結果、幼児向けTVアニメ『ペッパピッグ』関連製品の購入者の66%が、新規に獲得した顧客であったという。高度なターゲティングにより、新規顧客を効果的に開拓した一例だ。