なぜ「中国人向けの内装業」が成り立つのか
「社長は私のやる気を認めてくれ、将来独立したいという夢も応援してくれました。この会社で最初は現場管理と実技を学びました。業界には『軽天屋』(軽量鉄骨の職人)、『水道屋』、『電気屋』などと呼ばれる分野があるのですが、私は『軽天屋』から始め、すべての業務をこなせるようになりました」
その後、もとの内装会社との関係は保ちつつ、以前立ち上げた『三栄グローバル』の仕事も兼業した。内装の営業、工事などを中心に、不動産、整体店など事業を拡大、複数の整体店も経営している。
周氏が営む内装業の顧客は中国人の知人の口コミなどで自然と増えていったという。
「在日中国人が不動産を買い、その内装を依頼してくれるようになりました。当社は中国人の社員が多いので、中国人顧客の好み、要望に応えられます。
中国国内では基本的にマンションはスケルトンでの販売。内装や照明などはすべて顧客が手配します。日本では顧客が手配する必要はないのですが、中国のように自分好みに変えたいというお客さんも多い。そこに需要がありました。
管理組合に申請すれば内装を自由に変えられるマンションもあって、その申請も私たちが代行します。間接照明を提案したり、室内に映画観賞などで使うプロジェクターを設置したり、臨機応変に対応しています」
仕入れ先も作業員も顧客もほとんど中国人
現在は顧客の7割が中国人となった。仕事が増えるにつれ、内装業の仲間の紹介で、壁紙などの資材も在日中国人が経営する問屋から仕入れるようになった。その結果、仕入れ先、作業、顧客、すべてが中国人となっている。
最近、日本にやってきた富裕層は民宿や飲食店の経営にも乗り出しており、周氏はそのサポートも担っている。
「あるお客さんが神奈川県鎌倉市に約3億円で民泊用の不動産を購入したので、内装などをお手伝いしました。その宿泊客も中国人観光客です。中国人富裕層が飲食店を開業する場合、内装だけでなく、店内の設計、看板のデザインなども私たちが行います」と周氏は語る。
内装業者はもともと中国人が多く、中国人顧客の需要もあるので、当然、業界に参入しようとする中国人は数多い。
周氏は「東京で内装全般を行う中国系の会社は、私が知る限りで7~8社はあります。ライバル関係ですが、コロナ禍など、大変なときには助け合いました。ロシアとウクライナの戦争の影響で、世界的に木材が不足していますが、そこでも融通し合ったりして、常に情報交換しています」という。