新施設では、単に荷物を保管し、送り出すだけではなく、もっとお客のニーズを掘り下げたサービスを提供する。例えば、別々の地から輸入されてくる1つの製品の部品群を、うまく集めて発送したり、少し加工をしてから届けたりする。部品を受け取る工場側の立場に立って、「ジャストインタイム」で生産ラインに乗るように、低コストで届ける仕組みを築く計画だ。野菜や水産物など食品の原料になる品々も、組み合わせ、ちょっと加工してあげてから、送り出すようにする。

超円高などの「六重苦」で、ものづくりの国内拠点が海外へ出ていく「産業の空洞化」が進んでいる。政府も産業界も国内回帰への手を探っているが、計画は、その動きを支えていくことにもつながる。それも、年間に約14億個もの荷物を扱っている自分たちの役割だ、と思う。

家電製品などの短期修理サービスも、羽田を拠点に大展開したい。メーカーの修理部隊も同居し、修理品を預かってくれば、翌日には送り返せるようにする。家電製品や家具などを届けた際に、据え付けまでやってあげることも、構想にある。

大阪時代を振り返れば、「作業アシスト」の仕組みを導入した際、ドライバーたちの目つきが変わった。それまでは指示を受けるだけの立場だったのが、逆に、数人ずつ付いた人間に指示を出さなくてはいけなくなった。情報の共有化や目標の共通化も、欠かせない。そのように小グループのマネジメントを任されて、ぐっと、やる気が増したようだ。自然、責任感も強まっていく。

羽田の新施設は、数年以内に稼働させたい。ただ、構想の実現には、社員が様々なノウハウを持つ必要もある。いま、人材を養成中で、目つきが変わった面々を、そろえたい。あの大阪での手応えを、もう一度味わってみたい。どの計画も「2つのお客」のうちの受け取り手へのサービス向上が出発点。そして、自ら主導権を握り、新たな市場を築いていく。「善戦者致人」の構えは、全社のトップに立ってからも、続く。

(聞き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)
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