今でいうLINEのブロック的な行為をする女性も

でも江戸時代の娘さんははっきりしていて、嫌いな相手からの手紙だったら、

わがすかぬ男のふみは母に見せ 明三松2
なげかへす文をおぼへて居なと取り 安七智2

お母さんに見せたり、投げつけたりと、にべもないです。今でいうブロック的な行為でしょうか。

手紙以外でも、タイプでない男性に口説かれた女子は……

わっちゃあいやよとこわ高に娘いひ 天五花2
不承知な娘ひたいへしわをよせ 明六義1

と、露骨すぎる拒否反応。

寄りなると是でつくよとむすめいい 安六梅1

と、針仕事中の女子は針で威嚇したり

逃げしなに娘きせるでむごくぶち 明六亀1

キセルで激しくぶってきたり、江戸の女子は気が強いです。

しかし男子の口説き方が、ぶたれても仕方ないくらいひどい場合も。

くどきそびれてかんざしを又かりる 天四宮1
かんざしを借りかの穴をほる手だて 末三28
辛酸なめ子『川柳で追体験 江戸時代 女の一生』(三樹書房)

当時、好きな女性に声をかける口実として「耳の穴を掃除したいからかんざしをちょっと貸して」と頼む風習があったとか。かんざしで耳掃除……ゾワゾワします。変態っぽい上に不衛生で、現代ではありえません。言われたら瞬時に生理的にダメになります。

江戸時代の女子は、好きな相手にならお尻をつねられても、かんざしを耳垢まみれにされても良いと言うのでしょうか。価値観がおかしいです。

男女の駆け引きはまだ続きます。

くどかれて娘は猫にものをいひ 明四宮1

と、猫にそっと告白してみたり、

よしなよとむすめ一寸ほどゆがみ 明七桜3

口ではよしてと言いながら、体は男性の方に傾いていたり

れて居てもれぬふりをしてられたがり 宝八鶴

惚れていてもそれを相手には見せないテクニックや、

逢ふ度にこわがりながら逢ひたがり 宝八鶴

娘心に男性の本当の望みは何であるか察している様子など、恋愛初期のドキドキするシーンが川柳に描かれています。

ばからしいいやとくらい方へにげ 三二32

いやがりながらも、人気のない方へ自分から男性を導く女子の姿が目に浮かびます。

とく心のむすめふふんと笑う也 明七信2
文を書く娘は封を切らせる気 八五3

と、それとなくOKだと相手に伝え、覚悟を決めます。