共有者は100人以上
司法書士が調べてみると、やはり森夫は山林を共有名義で所有していました。共有者の数は、実に100人以上です。
森夫の権利部分の名義は、森夫の父のままでした。そこだけ相続登記が漏れていたのです。
司法書士が「山林の持ち分は、おじいさんの名義ですよ」と美紀に伝えると、「ええっ!」と驚いていました。
「これを機に、相続登記をしますか? 今やっておかないと、権利者がどんどん増えて大変になりますよ」
「それじゃ、お願いします」
司法書士は戸籍をたどって権利者たちを特定し、権利を放棄してもらいました。こうして美紀は無事に、山林の持ち分を相続登記することができたのです。
「山林の共同所有」田舎ではよくあること
山林を共同所有しているのは、田舎ではよくあることです。この話と同じく、まるで分譲マンションのように100人以上がひとつの山を共有しているケースも珍しくありません。
かつては山で薪や山菜、獲物などを取っていて、山は文字通り「宝の山」でした。
「この山のこのエリアは、この集落のみんなのもの」といった入会権のようなものがあったのでしょう。
ところが今は、価値のない山がとても多く、相続したところで農地のようにお荷物になりかねません。
さらにこの事例のように、自宅の土地・建物はきちんと相続登記をしたのに、共有している山の名義の書き換えが漏れているというのが、田舎ではよくあります。