自身の死に、どう備えておくべきか。税理士の島根猛さんは「財産目録や遺言書をつくっておくと、残された家族に財産はどれくらいあるか、どう取り扱ってほしいかを伝えられる。財産目録は手間がかかるという人は、通帳や保険証券などを一つにまとめて保管するだけでもいい」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、島根猛『「もしも夫が亡くなったらどうしよう?」と思ったら読む本』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

通帳
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夫の財産を洗い出してみて、妻は青ざめた

私は相続関連のセミナーで講師を務めることがありますが、生前に財産目録をつくることの重要性は、必ずお伝えしています。生前のうちに財産目録をつくっておいてもらえれば、遺産分割協議をスムーズに進められますし、そして何よりご主人の財産を事前に把握できれば、奥さまの老後の生活をより具体的に見通すことができます。

次のような話を聞いたことがあります。

ある奥さまは、生活費を含めてご主人からお金をもらったことがほとんどなく、ご自身が病気になって入院しても、ご主人は医療費を一切出してくれなかったそうです。奥さまには兄弟がたくさんいたので、仕方なく兄弟にお金の相談をしていました。一方で奥さまは、ご主人が亡くなったら相続人としてそれなりの財産を相続できるだろうと考えていたようです。

そして実際にご主人が亡くなって財産を洗い出してみたのですが、奥さまの予想をはるかに下まわる額であることが判明しました。ご主人はケチで妻に生活費を渡さなかったわけではなく、そもそもお金を持っていなかったことが明らかになったのです。奥さまのあては大きく外れてしまい、これではその後の生活もままなりません。

このお話から得られる教訓としては、やはり生前からご主人とコミュニケーションをとっておくべきであるということ、そしてご夫婦で夫に先立たれたあとの奥さまの生活について、真剣に考えておくべきであるということです。