国土の約20%は「所有者不明」

正蔵が古民家をリノベーションするためには、銀行からリフォーム資金の融資を受ける必要があります。そのとき、土地と建物を自分の名義にして抵当権の設定登記をしなければ、融資を受けることはできません。

銀行に「あれ、おじいちゃん名義ですね。これじゃ融資は出せませんよ」と言われてしまうでしょう。

日本には、登記簿上の所有者が死亡していたり連絡先が不明だったりして、誰のものかわからない土地(所有者不明土地)がたくさんあります。その広さは、2016年時点で約410万ヘクタール(国土交通省調べ)。

これは国土の約20%を占め、九州の面積を大きく上回ります。つまり、九州の広さ以上の土地が「持ち主不明」なのです。

疑問符が描かれた紙を顔の前に持つ人
写真=iStock.com/AlterYourReality
国土の約20%は「所有者不明」(※写真はイメージです)

調べてみると「名義が何代も前から変わっていない」ことも

この大きな原因は、相続登記をしていないことです。土地を相続した人が「私が相続しました」と登記するのがルールではありますが、実は、これは長い間義務化されていませんでした。

相続登記をするには、手間もお金もかかります。そのために相続登記をしないケースが多発し、相続未登記問題が深刻化したのです。

実際に、私自身、相続や不動産登記をお手伝いするとき、相続登記されていないがために手間取ることが少なくありません。

たとえば、次のようなケースがありました。家屋敷に代々の長男が住んでいて、あるとき、土地の一部を買いたいという人が現れました。「いらない土地なので売ろう」となったのですが、登記簿を調査したら、名義が何代も前のもの。本人は「えっ⁉」と驚いていましたが、これではすぐには売れません。相続登記をしなければならないからです。