重要なのは「よく食べ、よく眠る生活」
5歳までの子どもは、言うなれば原始人のようなものです。本能のままに生きているという意味もありますが、人間が生まれる過程を見るとその理由がよくわかります。ヒトは、魚類から両生類、爬虫類、時代を経て哺乳類へと進化する過程で生まれた生き物です。そして実は、私たちは母親の胎内にいる時に、これと同じ進化の過程を一気にたどっているのです。
胎生25日の胎児の頭部には魚のようなエラがあり、まだとてもヒトとは思えません。その後、魚類から両生類へと進化するように鼻などが形成され、顔の真横にあった目が徐々に正面へと動き、やがてヒトの形になってこの世に誕生します。生まれたばかりの赤ちゃんは、姿かたちこそ人間ではあるものの、まだ人間になりたての状態。進化の過程に沿うなら、まず目標とすべきは原始人であり、そこから少しずつ文明が扱える現代人を目指せば良いのです。
ですから、5歳までの子育ては、「うちの子を立派な原始人に育てる!」という意気込みで取り組んでください。この発想は、「からだの脳」を最初に育てる脳育ての理論とも一致します。「からだの脳」を育てるには、よく食べ、よく眠り、規則正しい生活を繰り返すことが大切ですが、これはまさに「日が昇ったら起きて食べ、日が沈んだら身を守るために安全な場所で眠る」という原始人の生活そのものです。この時期に育まれる生きるためのスキルは、文明が高度に発達した現代においても、自分の命を守り、健康に生きる上で不可欠です。
どんなに遅くても夜の8時までには寝かせたほうがいい
わが家では、娘は生後50日から保育園に預けられ、毎朝7時半頃には登園し、帰宅は夕方6時〜7時頃でした。幼いうちからハードな保育園生活を送っていたわけですが、どんなに私の帰りが遅くなっても夜8時までには娘を寝かせていました。
娘の就寝時刻から逆算して保育園のお迎えに行き、時間がない時には夕食やお風呂は適当にはしょり、それでも間に合わない時はシッターさんの手を借りながら、夜8時に寝かしつけることだけを目標に生活を送っていました。帰宅後に団らんするような時間はほとんどありませんでしたから、娘とスキンシップが取れるのは夜、布団に入ってから眠りにつくまでの間くらい。
それ以外では朝食の時間が、家族全員そろってコミュニケーションを取れる唯一の時間です。娘と一緒にたっぷり眠り、元気いっぱいに目覚め、みんなでモリモリ朝食を食べながら朝の会話を楽しんでいました。
共働き家庭の場合、夕食の支度は仕事から帰宅した夕方6時〜7時頃になることが多いと思います。親心として「なるべく手作りのおかずを提供したい」「栄養バランスを考え、品数を多くそろえたい」という気持ちもわかりますが、そのせいで就寝時刻が遅くなってしまっては、脳育ての観点では本末転倒です。