書店で2時間過ごし、1万円分の本を買おう

そうは言っても、これまでに本格的な読書をしたことがない人にとっては、疑心暗鬼かもしれません。読書の効用は事後性が高く、何カ月も何年も経ってから「ああ、あのときあの本を読んでおいてよかったな」としみじみ思えることもありますが、成功体験のない人にとっては、効用を得られるまでに時間のかかる読書は苦痛かもしれません。

では、どうやって事後性を克服するか。私が考える方法は2つです。

1つは「四の五の言わずに読んで書け作戦」です。歴史の風雪を耐えた名著を、選り好みせず、苦痛だろうが何だろうが兎にも角にも読み通す。ただ読むだけでは身が入らないので、読後感のメモをつくるようにします。古風な方法ですが、何度か繰り返していると読書の価値を実感するでしょう。

もう1つは「2時間1万円作戦」。私が大人の読者におすすめするのはこちらです。まず後の予定がない、時間にゆとりのある日に2時間を確保して、できるだけ大きな書店を訪れます。財布には1万円を入れておきます。入り口付近の新刊やベストセラーが陳列されたコーナーは素通りし、いつもは足を踏み入れないジャンルも含め、あちこちの棚を見て回るのです。

気になる本があったらパラパラとページを捲り、時間をかけて「今この瞬間、どうしてもすぐに読みたい」と思える本を1万円分探してください。文庫本なら約10冊、新書なら4〜5冊程度、買えるでしょう。

「今この瞬間、どうしてもすぐに読みたい」本ですから家に帰ってからと言わず、帰りの電車内でもう読み始めるかもしれません。これを4〜5回も繰り返せば、読書の価値に気づきます。

このとき厳守してほしいのは「これを読んだらこういう知識が身につきそうだ」「皆が読んでいるから良いことが書かれているに違いない」「読書好きの誰某がすすめてくれたから」といった本選びをしないこと。「今、話題の○○○!」などと紹介されている本には手を出してはいけません。あなたの興味関心とはまるで関係ないかもしれない。まずは自分の興味関心だけを基準に本を選ぶことが大切です。

 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月30日号)の一部を再編集したものです。

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