有料の遊漁船では着用率は向上した

ルール変更後、2022年に知床遊覧船事故が発生したこともあり、国や関係組織はマリーナや漁港などで、ライフジャケットの適切な着用や出航前の点検など、安全確保へ向けたリーフレットを配布したりパトロールを実施したりして、ルール順守を呼び掛けている。

ライフジャケットの着用を呼びかけるチラシ

2018年以降、着用率は向上している。釣り客を乗せる遊漁船では、船室内での着用は適用外だが、船長や利用客も含め「救命胴衣」の着用義務が遊漁船業法で規定されており、違反すれば営業停止などの罰則がある。全日本釣り団体協議会の幹部は、「遊漁船での着用率はかなり向上している」という。

「今から泳ぐ」で適用除外になる運用の穴

一方、プレジャーボートについては、まだ十分な着用状況とは言えないようだ。念のため説明すると、プレジャーボートとはモーターボートやヨット、水上オートバイなどを含む小型船舶の総称。遊漁船などと違って営業を伴わない個人的な海洋レジャーのためのものであり、沖釣りやクルージングなどに利用される。貸切状態になるため「自分だけの空間という感じで、船上でライフジャケットを着用していない人をよく見掛ける」(同協議会幹部)という。

プレジャーボートでも、当然、船内ではライフジャケットの常備・着用が義務だが、遊漁船などとは違った例外もある。「プレジャーボートの場合、船から海へ飛び込んで泳ぐ利用者もいて、着用していなくても『今から泳ぐんです』と言えばOK」(同)という運用になっており、海上で関係機関の巡回や取り締まりで注意を受けてもルール違反に問われないという。こうした例外も着用率が向上しない要因となっているのかもしれない。

海水浴とは違って岸から遠ざかる船では予測不能な事態に巻き込まれる可能性が常にあり、ライフジャケットの着用は必須だ。実際にここ数年、プレジャーボートでの死亡事故も多数発生している。