なぜ刑事以外が主役の刑事ドラマが増えたのか

太田省一『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)

主演の沢口靖子が演じる榊マリコは、京都府警科学捜査研究所で働く法医研究員。科捜研の仲間とともに最新の鑑定手法を駆使して事件の真相を解明する。科捜研のメンバーは、文書鑑定や映像データ解析などそれぞれに得意の専門分野があり、榊マリコはそのリーダー的存在だ。そして内藤剛志演じる刑事・土門薫らと協力して犯人逮捕に貢献する。

指紋鑑定やモンタージュ写真などに代表される科学捜査は、刑事ドラマの歴史においてだいぶ以前からすでに登場していた。ただそれが物語の中心的役割を果たすことはほとんどなかったと言っていい。

『相棒』でも緻密な技法を使った鑑識やデータ解析の活躍する場面が増えていったように、この頃から科学捜査は刑事ドラマの目玉のひとつになったと言えるだろう。

そこには、現実社会においてインターネットの普及とともにサイバー犯罪が急増し、特殊な専門知識が必要な捜査が比重を増したというような時代背景もある。

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