和歌に込められた強い思い
昭和天皇はこの日、次の御製を詠んでおられた。
いまだならず
くやしくもあるか
きざしみゆれど
およそ以下のような意味かと拝察する。
これまでひたすら平和な世界を祈ってきた。しかし、晩年を迎えた今も、成就しない。それが悔しい。わずかな兆しは見えているけれど。
天皇という重いお立場にあって、しかも和歌というみやびな表現形式の中で、あえて「くやしくもあるか」という厳しく率直な表現を使っておられる。
それほど昭和天皇の平和への願いが強かった事実を示すものだろう。
平和への思いを受け継ぐ愛子さま
その昭和天皇の平和への願いをまっすぐに受け継がれたのが上皇陛下だった。平成6年(1994年)から始まる上皇・上皇后両陛下による「慰霊の旅」は、あらゆる困難を乗り越えて国内外の戦跡をたどられたお辛い道のりであり、まさに先帝の無念のお気持ちを体しての、強い使命感によるご行動だった。
○長崎、広島、沖縄、東京都慰霊堂(平成7年[1995年]7〜8月)
○米国自治領サイパン島(平成17年[2005年]6月27・28日)
○パラオ共和国ペリリュー島(平成27年[2015年]4月8・9日)
○フィリピン(平成28年[2016年]1月26〜30日)
○ベトナム(平成29年[2017年]2月28〜3月5日、同5・6日にはタイにお立ち寄り)
これらの「旅」を踏まえ、ご退位にあたり万感の思いを込めて「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」と述べられたのだろう。
そのような平和への思いを、天皇・皇后両陛下を通じて我が事としてまっすぐに受け継いでおられるのが、敬宮殿下でいらっしゃる。冒頭に触れた終戦記念日だけでなく、沖縄県慰霊の日の6月23日、広島原爆の日の8月6日、長崎原爆の日の同9日には毎年、両陛下とご一緒に黙祷を捧げ続けておられる。「空が青いのは当たり前ではない」というのは、まさしく殿下のご実感だ。
平和はこれからも皇室にとって大切なテーマであり続けるだろう。そうであれば、将来の皇室を担っていただくのに、敬宮殿下ほどふさわしい方がおられるだろうか。