自己啓発本が読めるのは目的が「悩み解決」だから

古市 あとは、ゆかりのある場所に行くのもおすすめです。昨年フランスに行ったとき、「そういえば『失われた時を求めて』の冒頭に登場するステンドグラスが見たいな」と思ってランスやシャルトルの大聖堂を訪れました。本当のモデルかは諸説ありますが、現地へ行けば読むきっかけができて、本を開きたくなります。

三宅 逆もありますね。本を読んでいるから、「能のこの演目は『源氏物語』にあったな」「この名所はあの作品に出てきたな」と、本で読んでいなければ通り過ぎていたようなものに気づいたりする。その意味でも古典はおすすめです。古典は時間軸が長いから、フックになるものがたくさんあります。現代小説よりお得感があります。

古市 やはり目的意識を持つことが大切そうですね。 本は最初から最後まで読まなくちゃいけないと思い込んでいる人は多いですが、ぜんぶ読む必要はまったくない。

本も検索と同じで、必要なところだけ目を通せば十分です。どこが必要なのかは、あなたの目的次第。知りたいことがあらかじめ明確になっていれば、知りたいこと以外が書かれているページは飛ばしても構いません。 目的があれば、読むペースもおのずと速くなります。

例えば、ほかの本はダメでも自己啓発本なら読めるという人もいますが、それは本のテーマが仕事や人生で悩んでいることに直結しているからですよね。目的がないなら自分でつくればいい。旅行はそのための手段になりえます。

三宅 目的といえるほど具体的じゃなくても、「読みたさ」をつくるのは重要だと思います。読みたさは何でもいい。私がおすすめしているのは、「これ、どうしてだろう?」と自分なりの謎を持つこと。

例えば同じ小説でも、ただ読むのではなくて、「なぜこれがベストセラーなの?」と謎を持つだけで読み進めやすくなります。書店に行くのも読みたさをつくる方法として効果的です。もともと本が好きだけど読めなくなったという人は、書店に行くだけでもテンションが上がるのでおすすめです。

書店に足を運ぶ時間もないなら、SNSで面白そうな本の話をつぶやいているアカウントをフォローするのもいいでしょう。自分が好きな作家や作品の名前で検索すれば、趣味嗜好が似ている読書アカウントが見つかるはずです。そのアカウントをフォローしておけば、疲れてSNSを見るだけで精一杯というときも本との縁をつないでいられます。そのときすぐ読めなくても、「次に読みたい本」候補があることは大事です。

(構成=村上 敬 撮影(人物)=小田駿一 撮影(書籍)=早川智哉)
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