「あまりにも男性的な顔」は女性から敬遠される

しかし、女性が男性的な特徴に魅力を覚えるのは、あるレベルまでだ。男性の顔があまりにも男性的だと、女性は傲慢さを感じる。がっしりした顎をもつ男性は傲慢だという印象は多くの文化で観察され、事実から隔たってもいないかもしれない。ウエストポイント陸軍士官学校の生徒は、在学中にも勤務を始めてからも、顔立ちが男性的である者のほうが女性的な容貌の同級生よりも軍人としてのヒエラルキーで上位に立てる。

子育てを手伝ってくれる安定したパートナーを求める女性には、あまりにも傲慢な男性は長期的なパートナーとして最善の選択ではないかもしれない。そのような男性は、人間関係や家族に関心を寄せないかもしれない。そのため、女性は男性的な特徴にいくらかの女性的な要素を併せもつ顔を好む。男性的な顔にやや女性的な要素が加わると傲慢さがやわらぎ、そのような顔の男性は温かく、気持ちのうえで頼りになり、人間関係を大事にする人物であるように感じられる。

女性が男性に魅力を覚える要素をめぐって興味深い微妙な特性として、月経周期によって好みが変わるという点もある。この変化は「排卵シフト仮説」と呼ばれ、人間における魅力研究で得られた確固たる発見の1つとなっている。若い女性は短期のパートナーと長期のパートナーのどちらを求めているかによって、異なるタイプの男性に魅力を覚える。

魅力は「コンテクスト」によって変化する

短期のパートナーを考えている場合、女性は男性的な外見の男性を求める。この傾向は、排卵の直前で妊娠する可能性が最も高い時期になると特に強まる。これに対し、長期のパートナーに関する好みには、月経周期による変動は生じない。短期のパートナーへの好みが排卵に伴って変動することの意味については、魅力に関する好みを動かす進化上の理由について詳しく論じるときに改めて触れたい。

顔の美しさに関する知見をまとめるなら、子どもも成人も、文化を問わず、同じ評価パラメーターに対して同じように反応する。男性でも女性でも子どもでも、平均的で対称的な顔におそらく魅力を覚える。男性と女性で異なる特徴も、その違いが強調されたときに魅力的に感じられる。

アンジャン・チャタジー『なぜ人はアートを楽しむように進化したのか』(草思社)

人を見るコンテクストによって、その人に感じる魅力の度合いが変わる。のちほど見るが、コンテクストは快感に強く影響する。女性にとって、男性が魅力的に感じられるかどうかに影響するコンテクストは、権力や地位かもしれない。女性が男性の形態的特徴に目を向ける場合、一時的な情事の相手を求めているのか、それとも人生をともに歩む相手を探しているのかがコンテクストを形成するかもしれない。女性が排卵期に近いかどうかによっても、コンテクストは変化する。

われわれが人に魅力を覚える場合、その人の体についても考える。たいていの文化では、露出した顔ほど頻繁に裸体を見る機会はない。しかし顔の魅力にまつわる原理に生物学や進化のかかわる基盤があるのなら、『なぜ人はアートを楽しむように進化したのか』(草思社)でのちほど見るとおり、同様の原理が人の体に魅力を与えるパラメーターにもあてはまることが期待できる。

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