「ダミーのスマホ」を教師に渡す生徒も多い

ところが、学校側が、「加害者にも未来がある」などと言って、適切な指導をしない場合があります。被害者は抗議したくても、「内申点に影響するかもしれない」「受験の推薦をもらえないかもしれない」などの恐怖心から、泣き寝入りせざるを得ないことがあります。そうすると、加害者は反省や更生の機会を失い、盗撮を繰り返すようになります。より悪質な犯罪者に成長し、つらい人生を送ることになるのです。

繰り返しになりますが、「すべての学校に盗撮事件がある」と考えて対策を講じることが重要です。「スマホを教室に持ち込まないように預かっている」というルールがある学校は多いのですが、ダミーのスマホを提出して、教室にはいつも使っているスマホを持ち込んでいる子どもはたくさんいます。目先の対策では意味がありません。

上谷さくら『新おとめ六法』(KADOKAWA)

盗撮は軽い犯罪ではありません。「触らない犯罪」のため、盗撮加害者の中には、「レイプのような凶悪犯罪ではない」という開き直った弁解をする人もいます。しかし、被害者がなぜ傷つくのか、想像力や共感力を正しく働かせば、そんなに簡単な問題でないことは、すぐにわかるはずです。

盗撮だけでなく、性的ないじめにもスマホは使われています。複数の女子生徒が、いじめのターゲットの女子生徒を裸にして写真を撮影し、仲間に拡散するような事件も起きています。「女子校だから安心」ということはありません。

また、性的な自画撮りを交際相手やSNSで知り合った大人に気軽に送ってしまう未成年者も後を絶ちません。「誰にも見せないからお願い」などという言葉を安易に信じてしまうのです。

スマホ以外にも盗撮機器はたくさんある

そのような画像は、仲間内で拡散されたり、ネット上で売られたりします。「言うことを聞かないとばらまくぞ」などと脅され、性的行為や金銭を要求されることもあります。北海道旭川市で女子中学生が性的画像を送るように脅され、それをきっかけにいじめがエスカレートして自死してしまうという痛ましい事件も起きています。

保護者は、子どもにスマホを渡す時、なぜ盗撮や自画撮りの送信を要求するのがいけないことなのか、被害者がどんなふうに傷つくのか、という問題をしっかりと話していただきたいと思います。

この夏休みの間に、一度親子で真剣に話し合ってみてはいかがでしょうか。親から見たらまだまだ幼い子どもだと思っていても、スマホの中身は大人顔負けの酷いことになっているかもしれません。未成年者は、簡単に加害者にも被害者にもなってしまうのです。

「撮影罪」は成立しましたが、盗撮自体は年々巧妙になっています。スマホ以外にも、一見それとはわからないような盗撮機器がたくさんあります。

出典=『新おとめ六法

盗撮以外に使いようがない物の取り締まりの強化や、こういった商品について情報収集することも重要です。盗撮被害の被害者に何の落ち度もありません。しかし、盗撮する人は相当数いると思われ、急にいなくなることはありません。「被害者が気づきにくい犯罪」であるからこそ、自分や大事な人が被害に遭わないよう、身を守る行動をすることも重要です。

関連記事
【第1回】「同意のない妊活」は不同意性交等罪になる恐れ…「夫婦間ではレイプは成立しない」が誤解である理由
不遇な梅子はなぜ「姑の世話」をキッパリ断れたのか…現役弁護士が感心した『虎に翼』の注目シーン
「下着に手を…」エリート会社員がアプリで出会った女性と一泊し不同意わいせつの被疑者にされるまで
教師の性犯罪裁判で傍聴できず「はて?」…横浜市教育委員会の組織的な隠蔽を暴いた女性記者たちの執念と連携
中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる…日本と全然違うカナダの性教育