健康のカギを握るのは「活性酸素」
ただ私は、理屈がわからないと納得できないタイプです。だから幼い頃から、「野菜を食べるとどうして健康な状態を維持できるのか」という疑問を抱きつづけてもいました。
そしてもうひとつ、大きなきっかけがあり、私は野菜を食べることの重要性に目を開かされたのです。
京都府立医科大学の大学院生だった頃、私は恩師の吉川敏一先生の研究室で、活性酸素の研究に従事していました。
活性酸素とは、簡単にいえば、私たちの体を錆びつかせ、老化させる物質です。その働きを抑える作用こそが「抗酸化」なのです。そして抗酸化作用を持つ成分は、さまざまな野菜に多量に含まれています。
「抗酸化成分が体にいい」ということは、今でこそ常識のように口の端に上っていますが、30年ほど遡る当時、そうした学説は一般の方々にはまったく知られておらず、研究者の間でさえ、「医者がなぜ、活性酸素のような目に見えないものを対象とした研究をするのか」と冷笑されていたのです。
今では、「植物の成分のうちでも、特に健康増進に寄与するものは、活性酸素を抑える抗酸化成分である」ということが広く知られています。
野菜を食べることがなぜ体にいいのか、その理由のひとつが、この研究であきらかになったわけです。
世界中の長寿の人が多い地域の共通点
そうしたいくつかの経験を通じて、私はどんどん野菜に魅了されていきました。そして、野菜の成分が人体に望ましい影響を及ぼす詳しいメカニズムが知りたくて、あれこれと深掘りして調べていくにつれて、次々に興味深い事実に行き当たっていきました。
たとえば、ネアンデルタール人はほぼ肉食だったという事実をご存知でしょうか。私たちホモ・サピエンスに劣らないほどの知能を持ちながら、彼らは私たちとの生存競争に敗れ、絶滅してしまいました。その背景にも、野菜が関わっているという説があります。
「ブルー・ゾーン」という言葉は、聞いたことがあるでしょうか。イタリアのサルデーニャ島、コスタリカのニコヤ半島など、100歳を超えるような長寿の人が特に多いことで知られる地域のことで、最近、注目を集めています。沖縄もそのひとつに数えられています。こうした地域の人々は、なぜそれほどまでに長寿なのでしょうか。
ここでも、キーとなるのは野菜です。