ミサイルの大量配備は国民を守るためでもある

ウクライナからすれば、ミサイルも戦車も戦闘機も、「最終的に提供するのであれば、もっと早めに提供してほしかった」というのが本音でしょう。もっと早く結論が出ていれば、戦況は変えられたかもしれません。そして、もっと多くの国民が死なずに済んだかもしれません。そんな悔しさがあるでしょう。

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特に防空ミサイルは、国民の命を守るためにも切実に必要な兵器でした。開戦以来、ウクライナは防空ミサイルの「東西問題」を抱えてきました。ウクライナとしては、リビウなど西部の各都市を守るために一定数が必要な一方、東部の最前線で戦う部隊を守るミサイルも同時に必要でしたが、数が圧倒的に足りなかったのです。

戦争は戦場だけでなく、当然ながら民間人の防衛も考えなければならないという教訓でもあります。まさにこれが、ゼレンスキー大統領が西側にもっと多くのミサイルを要求し、今もなお追加のミサイルを要求している理由です。

また現代の最新兵器は、提供を受けても自国の兵士が使いこなせるようになるには時間が必要です。特にF16のような「第4世代機」と呼ばれる戦闘機を使いこなすのは、ウクライナ空軍のパイロットでも簡単ではありません。

NATOはなぜ武器提供を「小出し」にしたのか

最低でも6カ月以上の訓練は必要と見られ、飛ばすだけではなく、火器管制システムを学び、地上部隊と連携する戦術の学習も含めると、さらに長い期間が必要です。機体のメンテナンス、部品供給など、戦車よりも大きな手間もかかります。戦況が日々めまぐるしく動く以上、早いタイミングでの決定がないと、戦いには間に合いません。

結局、F16戦闘機は23年6月頃からのウクライナの反転攻勢作戦には全く間に合わず、引き続き航空支援が十分にない地上部隊が中心の作戦は失敗しました。また、アパッチなどの攻撃ヘリコプターは2024年の夏の時点でも提供されていません。

それでも、前例のない規模の軍事支援がウクライナに行われてきたのも事実です。イギリスのベン・ウォレス国防相(当時)は、大量の武器を求めるウクライナに対して「我々はアマゾンではない」と反発しました。イギリスは大量の地雷除去車両を提供し、もう一台もイギリスには残っていないと苦言を呈しています。

また、ウクライナへの最新兵器の供給を「小出し」にしてきたNATO側にも言い分はあります。もし、ウクライナが求める全ての兵器を急いで一気に提供していたら「戦争がエスカレートして制御不可能になっていた、そうなればNATO軍とロシア軍との直接対決になるリスクがあった」という主張です。