田代弁護士は一転、調査を認めたが…
さらにA子さんは絞り出すようにこういったという。
「今の日本において性被害の告発は、相手の存在が大きければ大きいほど困難を伴い、様々な妨害を受ける。ネットやメディアによる誹謗中傷、探偵の尾行、弁護士からの“脅迫”。今後、さらなる妨害工作を受けても、私が彼らに屈することはありません」
田代弁護士側は、こうした文春側の反論に対して最初、「記事にあるような言動を行ったことは一切なく、全く事実に反する」と声明を出した。だが翌日に会見し、被害を訴えている女性を特定するため、A子さんらを調査会社に調べさせたという文春報道は認めた。スポニチ(7月12日)によると、「調査について『(松本は)当事者ですから知っています。了解なくやりません。お願いします、と言われた』と明かした」という。
どうやら文春が報じた田代弁護士側によるA子さんの「出廷妨害工作」はあったようではある。
だが、文春というのは現在のこの国のメディアの中で最も力を持っているといってもいい。その文春が係争中の相手側を一方的に批判する記事を7月18日号で6ページ、次号で「松本人志“出廷妨害”に新証言」を4ページもやることにまったく問題はないのだろうか。
元女性誌編集長の振る舞いはどうなのか
松本人志も文春ほどではないが、発信力を持ったお笑い芸人ではある。だが文春とは比較にならない。裁判にどのような影響を与えるのかはわからないが、世論に与える影響は大きなものがあるはずである。
大きな影響力を持ったメディアは、そうした発信力を持たない相手に対して、反論の機会を与えてやってもよかったのではないか。
例えば、こうした文春側の記事に対して、松本側の代理人である田代弁護士のいい分を1~2ページ載せてやる。それぐらいの度量が文春にあってほしかった。そう私は思うのだが。
文春側は、田代弁護士に話を聞きたかったが、期日までに返事はなかったから致し方ないというかもしれない。だが、コメントと係争中の相手側の誌面で反論をするというのは、田代弁護士側からすれば受け取り方が違うはずである。
文春の記事は、取材対象と一体化している女性週刊誌の非ジャーナリズム性を炙り出してもいる。
週刊誌に中立公正など求めはしないが、松本側の代理人のような働きをした元女性誌編集長の行動は、私から見ても分を超えた編集者にあるまじき下劣な振る舞いというしかない。