15年以上心の痛みとともに覚えている上司の言葉

「お先にどうぞ」と上司や先輩が先に注文するよう伝えましたが、「いや先に」と言われたので、私が最初に注文することになりました。

「チキンカレー、お願いします」

と、私が言った瞬間、上司が

「君とは仲良くなれそうにないね」

と、たったひと言ピシャリと冷たく言い放つではありませんか! とてもビックリした私は、「自分は何をやらかしてしまったのか? しかも転職初日から! これからこの職場で、うまくやっていけるかしら……」と頭の中で思考がぐるぐるとまわり、「終了!」という言葉が鳴り響きました。

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かなりの衝撃で、15年以上経った今でも心の痛みとともに覚えています。

実は、その上司はチキンが大嫌いだったのです。子どもの頃に鶏が食用にされる作業を見てしまって以来、食べられなくなったそうです。

さて、話を共感の話題に戻しましょう。

この上司の話を共感しながら聞くのであれば、

「チキンが嫌いなのですね。子どもの頃に見てしまったら、相当ショックな光景ですよね」

という会話になるかと思います。

この上司と一緒になって自分がチキンを嫌いになり、今後一生、自分もチキンを食べないということではないのです。

「安心、受容、共感」の3つがコツ

人はそれぞれ、異なった価値観や考え方を持っています。自分と一致するとは限りません。

しかし自分にとって、自分の価値観の中でも、とりわけ大切にしているもの、大きなウエイトを占めているものについて、相手との違いが大きければ大きいほど、相手とのコミュニケーションが複雑になってしまうのです。

もしあなたが、誰かとのコミュニケーションにおいて、自分とは違う価値観や考え方に遭遇した場合、自分を犠牲にして相手に合わせる必要はないのです。

そんなときは、私のこのチキンカレーのエピソードを思い出してください。

「あっ! これ、チキンカレーね」くらいに思えば、気持ちが楽になるでしょう。

相手に共感しながら話を聞くときでも、自分の価値観を変えなくていい。

しかし自分の考えを持ちながら聞いていると、相手に反論したり、アドバイスしたりしたくなる自分が出てきてしまいます。だから一旦、脇に置いておくのです。

自分の考えは、そのまま持っていていい。自分を大事にしながら、相手も大事にするのには、3つのコツがあります。

3つのコツとは「安心、受容、共感」です。

まずは「何を言っても大丈夫」という、安心した空気感や雰囲気を作ること。

心理的安全性を確保するには、相手の話を否定せず、反論せず、アドバイスせず、まずは聴くことが大切なのです。

この「まずは聴く」というのが受容です。

相手の考え、価値観、世界観をそのまま受け止めることです。