50代後半くらいからは「ちょい太め」でいい

若い世代や中年世代はどうしたらいいのでしょう?

基本的に、若い世代は放っておいても免疫力があり、活力もあります。体内でコレステロールを生産する能力も高いのです。

食事から摂取されるコレステロール量は、若い世代も高齢世代も変わらず、たかが知れています。なので、血液中のコレステロール値が高いなら、何らかの原因があると考えて、薬を検討してもいいかもしれません。動脈硬化や、そこから始まる心筋梗塞はやはり、若い世代にとっては大きなリスクですから。

ちなみに30~40歳代には、心筋梗塞が少ないのは事実です。なので、それほど数値が高くないなら、動脈硬化に神経を尖らせることはないと思います。

50代、60代から動脈硬化が少しずつ進行していきます。このため、50代後半くらいからは“コレステロールが高め”や“ちょい太め”でも、私はいいと考えます。個人差があるので、やはり断言はできないのですが。

若いうちは「引き算医療」、高齢になったら「足し算医療」――と。

若いうちは体の余分なものを落としてもいいけれど、高齢になったら体に足りないものを足していく、という私の考え方です。

心筋梗塞の真犯人はいまだわからない

私がよく引き合いに出す話に「フレンチ・パラドックス」があります。簡単に説明します。

アメリカ、イギリス、ドイツでは、心筋梗塞で多くの人が死んでいます。「肉を食べてコレステロールが高いから」というのが、理由になっています。

ところが、同じように肉を多く食べ、コレステロールが多いとされているフランスやイタリアでは、心筋梗塞による死者が少ないのです。アメリカの3分の1から2分の1と圧倒的に少ない。この矛盾を「フレンチ・パラドックス」と言います。

なぜ、こんな矛盾が起きるのか? 世界中で議論が巻き起こりました。

有力な説と考えられているのが、「赤ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化作用が心筋梗塞を抑えるのではないか」というものです。フランスやイタリアでは、ワインを多く飲みますから因果関係が推論されたのでしょう。日本でも赤ワインがブームになりましたが、この説がきっかけと言われます。

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他にも「魚介類の脂肪(DHAやEPA)がいいのではないか」などとも言われましたが、このパラドックスが完全に説明されたわけではありません。

つまり、心筋梗塞の“真犯人”についてはいまだによくわからないし、何がそれを防ぐのかもよくわかっていない。“推測の域”を出ていないのです。にもかかわらず、コレステロールや脂肪が疑われ、日本ではいまだに害悪視され続けています。世界では見直されているのに、日本は遅れを取っているわけです。