「空気を読むのが得意」で「完璧主義」

インポスター症候群になりやすい人の特徴は、大きく2つあります。

1つ目は、空気を読む能力が高い人です。周りをよく見ている分、周りによくできる人がいることも知っているので、自分が評価されても「もっとすごい人はいっぱいいる」と思ってしまいます。本当は高い力を持っていても、視野が広いがために、比較する対象のレベルも高くなり、「自分なんてせいぜい並のレベルだ」と思ってしまうのです。

2つ目は、完璧主義な人です。自分に求めるレベルが高く、完璧でないと気が済まない。求めるもののレベルが高く、いくら頑張っても満足できません。周りから見ると、だからこそ高い成果を挙げていることも多いのですが、本人の自己評価は高くありません。

謙虚でまじめな人が多く、「周りの期待に応えなくては」という意識も強いので、努力も厭いません。ですから、周りからの評価を糧にして成長につなげることができれば、インポスター症候群もプラスに働くでしょう。しかし、「せっかく持っている能力やポテンシャルを生かして、もう少し責任あるポストを担ったらどうか」と言われても、遠慮して断ってしまったり、周りからの期待に押しつぶされ、メンタルヘルスを損なったりすることもあります。

写真=iStock.com/SergeyChayko
※写真はイメージです

「ジェンダーバイアス」や「企業文化」も関係する

インポスター症候群は、女性が陥りやすいといわれています。例えば男性が昇進した場合は「自分に能力があったからだ」と受け止めることが多いのに対し、女性の場合は「運がよかったから」「周りのサポートがあったから」と考える人が多い傾向があります。

なぜなら、インポスター症候群は、本人の性格だけが生み出すものではなく、「ジェンダーバイアス」や「企業文化」も大きく関係するからです。

「リーダーシップを発揮する役割は、男性が担うもの」「女性は、補佐的な役割を担うもの」というバイアス(偏った考え方や思い込み)はまだまだ根強く、それは男性だけでなく女性の中にも残っています。今はさすがに、自己主張をしたり、自分に自信を持っている様子を見せる女性が、表立って批判されるようなことは減っていますが、それでも、女性がこうした様子を見せることに対する、ネガティブな反応はなくなっていません。女性のインポスター症候群は、社会のジェンダーバイアスが生み出したものでもあるのです。

こうしたジェンダーバイアスをなくすための取り組みは、広がってきてはいますが、企業によっては、色濃く残っているところもあります。年功序列や長時間労働が当たり前になっていて、管理職も年次が上の男性ばかりだったり、女性や若手の意見を吸い上げようという空気がなく、「出る杭は打たれる」という雰囲気の会社では、インポスター症候群が生まれやすくなります。