3年連続「値上げラッシュ」の夏になる

豚肉の価格も上昇した。過去1年間、輸入豚肉は国内の卸値が1年間で4割上昇し、国産もおよそ40年ぶりの高値をつけた。東南アジアの新興国で豚肉の需要は増えている。国内の食肉企業が、海外勢に買い負けるケースも増えていると聞く。

人手不足による賃上げや、2024年問題による物流(トラック輸送)のコスト上昇などで、飲食、宿泊、交通などの価格も上昇傾向だ。5月、総務省の消費者物価指数は前年同月比2.8%上昇した。電力価格の上昇もあり、国内の物価上昇圧力は強い。現在の状況が続くと、3年連続で値上げラッシュの夏になりそうだ。

世界的に資源や穀物の価格が上昇していることは、国内の物価状況に大きな影響を与える。原油や天然ガスなどのエネルギー資源、小麦など一部の穀物の供給は不安定化している。

年初から6月中旬までの間、WTI原油先物価格は約13%上昇だった。中東情勢の緊迫化で供給不安は高まった。中東地域ではイスラエルと親イラン派のハマス、ヒズボラの戦闘が起きた。中東の紅海では、イランが支援するフーシ派による商船攻撃も増えた。

十分な原油が調達できなくなる恐れ

中東情勢がさらに緊迫化すると、イランが“ホルムズ海峡”を封鎖すると警告するリスクは高まる。同海峡は、世界の原油や天然ガス輸送の大動脈と呼ばれる。封鎖リスクの上昇は、原油供給減少懸念を高める。米国では、脱炭素で化石燃料関連プロジェクトへの銀行融資が手控えられた。シェールガスやオイルの生産を行う、“リグ”の稼働数が伸び悩んだ。サウジアラビアやロシアは減産幅の縮小方針を撤回する可能性も示唆した。

4月以降、欧州やアジアなどで天然ガスの価格上昇も鮮明だ。ウクライナ紛争で、ロシアから欧州諸国への天然ガス輸出は寸断した。欧州各国は、米国、中東、北アフリカなどから、天然ガス調達を増やし、世界的に需給は逼迫気味だ。一方、AIデータセンターが急増し、発電用の天然ガス需要は増えた。