一方、車両関連の支出600万円を、費用(減価償却費)として落としていないため、車両の資産評価を下げられず、2年目以降も600万円という車両評価額が繰り越される。ちなみにこの評価額はバランスシートに掲載される。
問題はここからだ。毎期税金が課せられるため、1年目から5年目までで合計200万円もの社外流出を強いられるのである。ようやく6年目になって、スクラップ時の価値0円に評価替えされ、利益0円で税金を払わなくて済む。
しかし、7年目に「さあ、自動車を新しく買い替えよう!」と思っても、手元に残っている資金は、「6年間の売上高600万円-5年間の納税額200万円」で、差し引きたった400万円。借り入れでもしなければ、同レベルの自動車を購入することはできない。つまり、「減価償却をしないと、設備の再投資に必要な資金が確保できなくなる」のである。
この点、図にある「償却あり」の事例ならば、1年後から6年後まで一定額ずつ設備を費用に落としている。この結果、取得1年後から「売上高100万円-費用(減価償却費)100万円=0円」と、設備の老朽化による経費を決算に反映させることができる。
もちろん利益が0円なのだから、税額も0円で済む。そうなれば、6年間の累計で見ても、売上高による収入600万円に対し、税額支出は0円となるから、結果として7年目の新車買い替え資金600万円を合理的に社内に留保できる。
以上を見てもわかるように、「減価償却政策の巧拙」は、「その節税額に相当する長期借り入れ」と同等の財務効果をもたらすのである。