『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』が大ベストセラーになったのは今から2年前。その後も『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?』など刺激的なタイトルの類似書が相次いで出版され人気を博している。このように会計関連の書籍がヒットしているのは、変化の激しい時代を生き抜く指針や判断基準が、強く求められているからなのかもしれない。

社長のベンツを4ドアにすべきか2ドアにすべきかなど、「庶民にとっては別に関係ない」といいたくなるところだが、「それで何百万円も税金の額が変わってくる」のであれば、当事者の目の色が変わるのも当然だろう。実は、税金と密接にかかわってくるのが、今回のテーマである「設備を毎期の決算上で、会社の経費として落とせるかどうか」なのだ。

設備関連の支出額を、毎年の決算である程度、経費として認めてもらう会計技術を「減価償却」という。そのとき、損益計算書に表記されるのが「減価償却費」だ。図の事例を一緒に検討していこう。事例では、減価償却という費用化の手続きを毎期の決算で行わなかった場合と、行った場合を比較してみた。前提となる毎年の条件は次の通りである。

(1)600万円の事業用自動車を購入。
(2)自動車の耐用年数(寿命)は6年で、スクラップ時の価値は0円。
(3)この会社の売上高は毎年100万円。
(4)その他の経費は一切かからない。
(5)毎年の法人税等は利益の40%。
(6)7年目に同額の新車に買い替える。
(7)減価償却する場合は毎期一定額とする。

まず「設備の費用化(減価償却)がない場合」に、毎期いくらの税金がかかるかを見たのが右の図である。減価償却を使わなかった場合、初年度から税金負担に苦しめられることになる。

「毎期の売上高100万円」に対して、減価償却がなく条件(4)によって「毎期の費用0円」なので、利益は100万円。そして条件(5)の税率40%がかけられるため、1年目から5年目まで確定申告時に40万円も税金を払う羽目になる。