行政を批判している少数派の女性議員は孤立してしまう

だが、標的にされる一番大きな理由はやはり、議会内の少数派であることだ。1人会派で弱い立場にあり、しかも行政を批判すると、目障りな存在だと目される。男性議員も対象になるが、田中氏のように「女性」で「少数派」、なおかつ「行政を批判している」と、目の敵にされやすい。「私が忌憚きたんなく意見を言うのが気に入らない。なぜそんなにはっきり、ものを言えるのか。自分の回りにそんな女性はいないぞ、という感じ」と田中氏。

次点で終わったが、田中氏は今年4月の市長選にも出馬した。その時目にした現職の谷ケ﨑やがさき照雄市長の陣営の様子に驚いた。「私の陣営に座っていたのは女性がほとんど。でも谷ケ崎市長の陣営は、黒スーツの男性がバーっと前の方に座り、後ろに割烹着を来た女性が立っていた。私が戦っているのはこれだ、と思った」と話す。

市長選でも、「上を見て働く男性職員のマインドを変え、女性職員の登用も進めなければ」「多様性尊重の時代。市民一人ひとりの生活や幸せに寄り添うケア重視の政策への転換が必要」などと訴えた。

日高市役所、2008年(写真=nattou/PD-self/Wikimedia Commons

日高市議会議員は16人だが、一度も役職に就けてもらえない

そうした田中氏の孤立ぶりは顕著だ。日高市の議員数は16人で、議会内の役職は互選で決まるが、田中氏はいまだに一度も就任したことがない。一方で、自分より当選回数の少ない議員たちが、どんどん常任委員会の委員長などに任命されていく。それは各自の議員報酬の額にも跳ね返る。

昨年末に開かれた議会でも、田中氏は一般質問を止められた。問題になったのは、「この問題につきましては、また議案が出た時に質疑させていただきます」という田中氏の発言。日高市議会では、行政側が答弁をした後の発言は、質問でなければならないことになっている。でもこれは質問ではない、というわけだ。

国会などではよく、要望を述べた後、「ということを申し述べて、私の質問といたします」といったやり取りが見られるが、そうしたことは許されない。

議会後に全員協議会が開かれ、田中氏は皆からルール違反だと指摘された。議員一人ひとりにどう思うか順に聞いていく形で進行するため、まるで吊し上げのようになり、かなり心理的負担がかかる結果となる。