レコード会社とアーティストによる謝罪は早かった

一連の出来事で評価できるのは、まず、ミセスの所属するユニバーサルミュージックの迅速な対応だ。リリースから24時間以内にMV公開停止、広報文を出したことだ。

そのプレスリリースには「本映像はMrs. GREEN APPLEの所属レーベルであるEMI Recordsと所属事務所Project-MGAで制作」と制作者を明記。「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現」と公開停止理由もはっきりと書き、「当社における公開前の確認が不十分」とチェック体制の不備を認めている。

本邦でのこのような件におけるお詫び文としては、かなり簡にして要を得たものといえよう。いわゆる「ご不快に思わせたならごめんなさい」系のお気持ち謝罪ではなかった。

また同日、ミセスのボーカル大森元貴もバンドのオフィシャルサイトでメッセージを掲載している。MV制作にあたり「・年代別の歴史上の人物 ・類人猿 ・ホームパーティー ・楽しげなMVという主なキーワードを、初期構想として提案しました」「『コロンブスの卵』というキーワード」とあり、おそらく制作クレジットの一番上に彼の名前があったのは、こういった全体のおおまかな方向性、アイデア出しを最初にしたということだろう。

Mrs. GREEN APPLE コカ・コーラCoke STUDIOキャンペーンソングDigital Single「コロンブス」(ユニバーサルミュージック) 画像=プレスリリースより

アーティスト本人のお詫びがMV公開停止の当日に出たこと自体、評価できる。例えば椎名林檎のツアーグッズが、障害や病気を抱える人たちのためのヘルプマークに酷似しており販売停止となったときには、最後まで椎名林檎本人の声明が出ることはなく、ファンの間にはフラストレーションがたまっていたからだ。

ボーカル大森元貴の謝罪文から透けて見える3つの問題

一方、大森の謝罪メッセージには気になる点が3点あった。

1点目は「類人猿が登場することに関しては、差別的な表現に見えてしまう恐れがあるという懸念を当初から感じておりました」「スタッフと確認し合い」とある。アーティストが抱いていた懸念を、周囲が打ち消して制作が進められたようだ。

しかし、MVの監督(ディレクター)やレコード会社は何をしていたのか。チェック体制に問題があったといわざるをえない。ここは検証され、公表が望まれる。歴史をモチーフに扱うのなら、考証やコーディネーターをつけるべきだっただろう。

コカ・コーラは「コカ・コーラ社はいかなる差別も容認しておりません」「弊社ではミュージックビデオの内容に関しましては、事前に把握をしておりません」とまったくMVに関与していないと声明を出した。

だが「コロンブス」の歌詞には「炭酸の創造」「乾いたココロに注がれる」など、コカ・コーラを直接想起させるワードが散りばめられており、そもそもコカ・コーラありきでつくられた楽曲であることは明白だ。MV中にも透明なコップに入ったコーラとおぼしき飲料が繰り返し出ていた。