スマはクロマグロに似た味でトロのよう、飼育期間も短い

スマは、系統的にはクロマグロの親戚筋にあたるので、味はクロマグロに似ており、養殖すると背側が中トロ、腹側が大トロのような状態になるという。しかも魚体はクロマグロのように大きくはならず、ブリより小型であるため、ブリの養殖いかだを転用して飼育することができる。センターがある愛媛県南部沿岸はブリとマダイの養殖が盛んな地域なので、いかだも漁場も共用できる。飼育期間もクロマグロが3年かかるところ、スマは8カ月で出荷サイズに育つ。

独自の基準に達したスマには「ひめスマ」やその上位ブランドの「伊予の媛貴海ひめたかみ」という商品名がつき、その需要先は都市部の高級料理屋である。クロマグロでは大きすぎて一尾仕入れることができない料理店でも、スマなら1尾仕入れて、お客様に見せながらさばき、刺身や寿司に供することもできるだろう。何とも都合の良いクロマグロ代替財である。

写真=水産経済新聞社/共同通信イメージズ
愛媛県養殖ブランド魚「スマ」、ブランド名「伊予の媛貴海」=2018年4月24日、愛媛県

クロマグロに比べ「選抜育種」で味も良くなっていくという強み

しかも、「選抜育種」しているので、今後ますますコストパフォーマンスが向上し、おいしくなっていくという。これもクロマグロと比べるうえでの優位性になる。クロマグロの場合、完全養殖はできているものの養殖魚の選抜はできていないようだ。しかしスマは魚体が小さく個別に扱えるので、個体を識別して、餌をよく食べる個体、給餌効率のよい個体を選抜して残したり、味覚試験をして味の良い個体の卵を採取して再生産したりできる。つまり何世代か時間をかけながら――と言っても世代交代期間はクロマグロの半分――生産者にとって育てやすく、早く出荷サイズになり、しかもおいしいスマを残していけるのである。

ここまで長所が並ぶと、もうスマに軍配を上げざるを得なくなるではないか。最終的な勝負がつくのかどうかは別として、こうして養殖魚の開発にも競争があること、それがわれわれ消費者の選択肢を増やすとともに、資源への漁獲圧力や環境負荷を減らす方向にもおおむね作用することを意識しておきたい。