昼寝が認知機能低下を防ぐ

3 昼食後30分程度の昼寝

午前中の活動で疲れた脳に食事で糖分を補います。昼食を取ると血糖値が上がって、眠気が起こります。30分程度の昼寝で副交感神経を刺激し体を休めます。目が覚めたら、交感神経の働きで活動的になります。

昭和の価値観を持つ日本人にとっては、「怠け者のすること」に見えるようですが、昼寝は認知機能低下を防ぐ効果があります。職場の机でうつ伏せになるのもいいですし、公園のベンチで目を閉じて少しの時間でも意識が遠ざかれば十分です。

できれば昼寝は午後3時ごろまでに取るようにします。体内時計が午後3時ごろに昼と夜が切り替わるからです。午後3時を過ぎてから昼寝をすると、夜の睡眠に影響します。

日中は適度な運動などで体を動かすことも大切です。

4 昼寝の前にコーヒーやお茶を飲む

コーヒーやお茶などに含まれるカフェインは脳を覚醒する効果があります。覚醒作用が現れるまでに30分ほどかかるため、その間に睡眠を取るのが効率的です。コーヒーやお茶の香りで気持ちが落ち着くのは副交感神経が刺激されるからです。そして、30分の昼寝が終わるころには覚醒作用ですっきりと仕事に戻ることができます。

5 夕食は就寝の3時間前までに

日が沈むころになったら質のよい睡眠を取るように意識することが大切です。1日3回の食事量は、朝:大、昼:中、晩:小の配分を心がけてください。食品によって消化時間は異なりますが、3時間は見ておく必要があります。夕食は、寝る3時間前までにすませておく必要があります。

とはいえ、仕事が忙しくて帰宅が遅くなれば、晩ご飯も遅くなります。就寝直前に食事を取ることもあるでしょう。その結果、眠りが浅くなり、朝も胃もたれで目覚めが悪くなります。こんな日が続けば睡眠の質はさらに低下し、睡眠負債がかさみます。それなら、夕方の休憩や残業の前に晩ご飯の時間を設ければいいのです。いまはコンビニに行けば栄養に配慮した弁当やサンドイッチなどの軽食がたくさん並んでいます。

6 「寝落ち」を防ぐには食後の散歩

午後3時ごろからメラトニンの分泌が亢進し、夕食後には血糖値が上昇、さらに日中の疲れや前日の睡眠不足があると、強烈な眠気に襲われます。シニア世代には、テレビを見ながら意識が飛ぶ、いわゆる「寝落ち」の状態に陥る人が多いのです。そうなると、メラトニンの産生が一気に進み、脳は一晩経過したものと勘違いします。寝落ちから目覚めたあとは、就寝時間になっても眠くならず、眠ったあとも頻繁に中途覚醒して睡眠の質は低下します。

不眠の治療で睡眠薬が効かないケースでは「寝落ち」という重要な情報が医師に伝わっていない可能性があります。寝落ちを防ぐには食後に散歩すればいいのです。ところが、睡眠専門医でないと寝落ちは見逃されやすく、睡眠薬が処方されることになるのですが、寝落ちが原因の不眠は睡眠薬では解決しません。患者は相変わらず夕食後の寝落ちを繰り返し、睡眠薬が効かないと訴え、医師は別の睡眠薬を処方します。脳が麻痺するほどの精神安定剤を投与され、薬漬けの状態で当クリニックに辿り着く患者は少なくありません。