3人目は、加藤勝信元官房長官(茂木派)だ。5月16日のインターネット番組・ニコニコ生放送で、「求められるものがあれば、しっかり応じていくのは基本だ」とし、総裁選出馬に含みを持たせた。同時に「常に何をするにしても、首相だったらどう考えるかという思いを持ちながら、これまで取り組んできた自負がある」と述べている。

「岸田首相にはお辞めいただきたい」

前回21年の総裁選に出馬し、昨年10月に次も「戦わせていただく」と広言した高市早苗経済安全保障相も動く。5月21日に配信されたラジオNIKKEIの番組に出演し、岸田内閣の不人気ぶりについて「国民が望んでいることに、きちんと取り組めていないのではないかという危機感を持っている」とコメントした。自身が顧問を務める「保守団結の会」が15日に総裁選を念頭に提言をまとめる方針を確認した、と産経新聞に報じられている。

自民党の地方議員から岸田首相に退陣を突き付ける向きも出てきた。自民党は5月17日、宮城県連を対象に政治刷新車座対話を開いたが、宮城県議から「岸田首相にはお辞めいただきたい」「トップを含めて人心一新を図るべきだ」などと次々に本音が飛び出した。その後も長野県連や横浜市連などでの車座対話で、岸田退陣論が続出している。

その意味で、「岸田降ろし」は本格化していないまでも、その芽は出てきている。

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首相と麻生氏に「手打ち」はあるか

岸田首相は、どう態勢を立て直すのか。衆院解散カードを封じられた以上、人事カードを切るしかないとされるが、簡単ではない。首相周辺には、総裁選に臨むうえで、何かと足を引っ張る茂木幹事長を更迭し、森山氏に交代させるべきだとの考えがあるが、権力構造の変化を嫌う麻生氏が受け入れるはずもない。森山氏は、首相の信頼を得ながら、菅前首相や二階俊博元幹事長にも近く、公明党とのパイプも太い。幹事長に就けば、政治路線が変わる可能性もあるからだ。

菅氏は6日夜、東京・麻布十番の日本料理店で、HKTと呼ばれる萩生田光一前政調会長、加藤氏、武田良太元総務相の3氏に小泉進次郎元環境相を交えて会食したが、総裁選に向けて存在感を示すことに主眼があるのだろう。

こうした局面では、岸田首相にとって、溝ができている麻生氏との関係を修復することが先決だ。麻生氏周辺は「明らかに首相と距離を置いた。最終的には総裁再選支持に戻ると思うが、今は揺れている」と打ち明ける。麻生氏は今のところ、岸田首相から会食を呼びかけられても応じていない。近いうちに両氏の「手打ち」の場面は訪れるのだろうか。

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