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使えない部下(評価レベル・下位)は、総じて労働意欲が低い

ただ、努力と同時にある程度の“余裕”も必要です。気持ちに豊かさがなく、こせこせしている人は、上司からするとキャパシティが小さく見えて安心できません。だから、一度は落ち着いて自省する機会が必要です。このとき余裕がない原因を外に求めてはいけません。論語には「己の能なきをうれえよ」とあります。反省しないで酒場で上司の悪口ばかり言っている人は伸びない。人のせいにせず、すべての責任は自分にあるという姿勢で深く省みるべきです。

使えない部下の特徴をいくつか挙げてきましたが、基本的に僕は駄目な人はいないと考えています。人間はそれぞれに天命を持って生まれてくるものです。同じ会社、同じ職場で働くことになったのは“ご縁”ですから、「こいつは使えない」と切り捨ててはいけない。人間的、道徳的にどうしようもないという人は仕方がないとしても、単に仕事ができないからとご縁を切ることがあってはならない。

論語にも「君子は人の美を成す」とあります。上司は部下の悪いところを見るのではなく、美点を凝視して、長所が活きる形で使う必要がある。野村証券で事業法人をしていた頃、法人営業では難しい人も、支店のリテール営業ならいけるのではと人事異動をかけたこともありました。適材適所です。

使えない部下を引っ張っていくために一番いい方法は、上司と部下の「同志的結合」を図ることです。部下は上司を信頼して、同じベクトルで動く。上司も部下に同じ気持ちで接する。そうして同志的結合ができあがると、つまらないことで悩まなくなります。大切なのは、上司がビジョンを示して、一体感を醸成すること。そこに上司と部下が同志として向かっていけば、「どの部下が使えない」とか、「上司とウマが合わない」といった次元の低い問題は消えてなくなるのです。

SBI HD CEO 北尾吉孝
1951年、兵庫県生まれ。県立神戸高校卒。慶應義塾大学経済学部卒業後、野村証券に入社。95年ソフトバンクに転じて常務。99年にソフトバンク・インベストメント(現SBI HD)を設立して、現職。
(構成=村上 敬)
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