高齢女性の4人に1人が貧困状態にある
パートやアルバイトという非正規の低賃金労働者は女性が圧倒的に多い。コロナ禍で経済活動がストップしたことで女性の自殺が増えたのはこれが理由だ。そんな劣悪な労働条件にへこたれず、歯を食いしばって頑張って働いたところで、待ち構えるのはさらに過酷な未来だ。
内閣府の調査では、老後に受け取るさまざまな公的年金・私的年金を合算した金額について、男性を100とした場合、女性の水準は52.6しかない。高齢女性の4人に1人は貧困状態にあることもわかっている。
では、このように「女性が1人で生きていくことが難しい国」で、なんとか生き抜いている若い女性の気持ちになっていただきたい。出産一時金や児童手当がもらえると聞いて、「子どもが欲しい」と思うだろうか。政府が子育て支援を充実したからといって「子どもを育てたい」と思うだろうか。
思うわけがない。自分1人でも満足に生きていけないこの日本で、さらに子どもを抱えて生きていくなど自殺行為だ。自分も子どもも不幸になるのが目に見えている。
「女性1人でも生きていける社会」をつくる
だから、本気で子どもを増やしたいと思うのなら、子育て世帯にバラマキなどするのではなく、「女性1人でも生きていける社会」をつくらなくてはいけないのだ。
人間は今に満足すると「今より幸せになりたい」と願う生き物だ。女性が1人でも生きているようになれば、心の余裕ができるので「誰かと一緒に生きていこう」という結婚や出産を検討する女性もあらわれる。1人でも生きていける社会ならば、もし離婚や死別でパートナーがいなくなったとしても、一人でもなんとか子どもを育てられる、という「自信」も生まれるのだ。
そんな「女性1人でも生きていける社会」で必要不可欠なのが、最低賃金の引き上げだ。今、岸田政権が掲げる「春闘で賃上げの好循環をつくる」というのは、女性やワーキングプアの若者にはほとんど影響がない。日本企業の中で大企業はわずか0.3%に過ぎず、日本人の7割は350万社の中小企業で働いている。しかも、労働組合はわずか2万しかない。
そんな超マイノリティで「過去最大のベア」とか言っても、最低賃金スレスレで働くワーキングプアへの影響はゼロだ。全国一律で賃金の底上げをするという意味では、諸外国がやっているような「最低賃金を物価上昇に合わせて段階的に引き上げていく」ということをやらなければ、いつまで経っても日本は「女性が1人では生きていけない社会」のままだ。
「出産・育児が罰ゲーム」になってしまったのは、日本政府が「産めよ、殖やせよ」という明治の呪いに縛られて、「家族」だけを過剰に優遇してきたからだ。「個人」を大切にしない社会で「家族」が増えるわけがない、という現実にそろそろ政府は気づくべきだ。