りんかい線は都が90%以上を出資する第三セクター方式で設立された東京臨海高速鉄道株式会社が運営している。先述した都の政策連携団体の一つになっている。斎藤真人社長は元収用委員会事務局長、谷本俊哉専務は元交通局建設工務部長だ。同社の「令和4年度 人件費等の状況について」によると、常勤の役員報酬は1人平均1205万円となっている。

りんかい線の車両(写真=elminium/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

天下り先になっている鉄道会社の運賃は高い

就職活動中の学生と話をしていて、「交通費の負担がきつい」と訴えられることが度々あった。とくにお台場の東京ビッグサイトではよく企業の合同説明会が開催される。就活生の多くが新橋駅、あるいは豊洲駅からゆりかもめに乗り換えて会場に向かうことになる。

新橋駅から東京ビッグサイト駅までは11.3キロで390円、豊洲駅からだと3.4キロで260円かかる。当然、そのためにはJRや東京メトロ、その他私鉄等を使うケースが多いから往復で1000円以上、場合によっては片道でもそのくらいかかってしまう。

ゆりかもめは株式会社ゆりかもめが運営している。路線名としてのゆりかもめは愛称で、正式には東京臨海新交通臨海線だ。安部文洋社長は元政策企画局技監だ。同社の「令和4年度 人件費等の状況について」によると、常勤の役員報酬は1人平均1310万円に上る。

この会社には株式会社東京臨海ホールディングスが99.9%、東京都が0.1%を出資している。東京臨海ホールディングスは都の臨海副都心における第三セクター会社を統括する持ち株会社で、梶原洋社長は元東京都副知事が務めている。施設管理事業、交通事業、ビル事業、展示会事業、埠頭事業でグループ会社を持っている。各社でも天下りポストが用意されやすい。

ゆりかもめ(写真=Nyohoho/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

なお多摩都市モノレール株式会社も、株の80%ほどを東京都が所有している。奥山宏二社長は元下水道局長だ。同社の「2022年度 人件費等の状況について」によると、常勤の役員報酬は1人平均1201万円に上る。

「都庁ホールディングス」と呼ばれる理由

JRや東京メトロなど既存の鉄道会社が新しい路線を作れば、鉄道運賃は「一社一運賃」が原則なので、初乗り運賃加算はないし、距離別運賃も同じだ。新路線開設のための資本費回収促進のための「加算運賃」は認められているが、それほど高額にはならない。しかし全くの別会社となればそうはいかない。そのコストは利用者、都民が負担することになる。天下り先確保の意向が新たな鉄道会社設立の動機になっていないかという問題だ。

猪瀬直樹知事(在任2012~2013年)のときに東京メトロと都営地下鉄の統合が目指された。「バカの壁」で話題になった九段下駅の乗り換え改善策は講じられたが、統合は実現しなかった。現在両社線の乗り継ぎでは70円の割引はある。