「偽造品の横行」「企業技術の盗用」が問題に

台湾企業の破産や撤退によるトラブルは後を絶たなかった。企業が密かに工場売却を進めるなか、労働者たちがストライキを起こし、仕入れ先が支払いを求めて訪れるケースや、社長が夜逃げし、数千人の労働者が一夜にして失業する事態も発生した。

台湾人社長にとって、優遇税制の廃止や人民元の切り上げなどによる打撃に加え、増え続ける労働者のストライキも不安の一因となった。知的所有権の不備、偽造品の横行、企業技術の盗用も大きな問題だった。

さらに、ファーウェイ、レノボ、華星光電、京東方科技集団(BOE)など、中国本土の企業が国際競争力をつけ急成長してきたため、台湾企業のシェアが縮小した。

中華徴信所(CRIF)の調査では、2020年、有力な台湾企業1000社のうち、営業収入が前年比で増加した会社は半分に満たず、税引き前の利益も20%減少した。

2509項目を輸入禁止にしていた

2023年4月、中国商務部は台湾の対中貿易制限措置に関する「貿易障壁」について正式に調査を開始した。対象は半導体、農産品、紡績製品、化学工業製品など2455項目に及んでいる。

2024年1月から調査の結果が少しずつ出ている。同年1月2日に「華夏経緯網」(中央政府系のサイト)は、中国商務部は長期間の調査を経て、台湾の対中貿易の制限措置をめぐる「貿易障壁」の事実があると認定したと報道した。

邱海涛『中国の台湾武力統一が始まる』(徳間書店)

調査結果によると、台湾は大陸から農産品、卑金属および製品、紡績原料および製品などを含む2509項目にわたる産品と製品を輸入することを禁止しており、金額は44億8000万ドルに達している。

対抗措置として、大陸は台湾からプロピレン、パラキシレンなど12項目の商品を輸入する際、ECFAで優遇される税率の適用を中止する。

この対抗措置は、「台湾の化学工業にとって痛い打撃を与える」と大陸の有識者が言う。事態の推移によって、中国側は台湾側を相手取ってWTOに提訴することも考えているという。

「中台経済が共に繁栄する時代は終わった」という言葉が、いま双方の経済界で囁かれている。

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