中国政府は中国での性産業を厳しく取り締まっている。その結果、かつて「10万人の娼婦がいる」とされた広東省東莞市でも、10年前とは光景が一変しているという。ジャーナリストの邱海涛さんの著書『中国の台湾武力統一が始まる』(徳間書店)より一部をお届けする――。(第3回)
中国社会で進む「性意識革命」
筆者はこれまでに、中国人の性事情に関する本を4、5冊出版した。中国では日常会話で命のことを「生命」とはいわず、「性命」という。これは「性愛」や「セックス」がなければ「人間の命」が成り立たないという考えに基づくからだろう。
中国人の「愛」と「欲」と「性」への情熱的な渇望が垣間見える。
一方、「生命」という言葉は、中国では詩作や医学論文など特定の文脈でのみ使用される。
約40年前、中国は西側の投資を呼び込む改革開放政策へ舵を切った。
外資の進出と経済の活性化により、庶民の生活は豊かになった。それと同時に、性意識の解放を含む性文化の大革命が起こった。毛沢東時代の厳しい禁欲主義と比べ、現在の社会は大きく変わった。
売春という社会問題も浮上
性意識革命が起こる一方で、売春という社会問題も浮上している。
14年前に出版した本では、「中国で性産業に携わる人は500万人以上、年間収益は1兆円にも上る」と記述したが、現在の性産業はどうなっているのだろうか。
過去5年間、米中貿易摩擦、コロナ禍、経済不振などが相次ぎ、若者たちのセックスライフにどのような影響があったのか。色街はまだ健在なのか。売春婦たちは心を入れ替え、どこかで真面目に働いているのだろうか。