性産業は地下に潜った

ところで、東莞の性産業は壊滅したが、いうまでもなく、中国から売春が消えたわけではない。

広いホールで女たちがセクシーな衣裳を身にまとい、列をなして愛嬌ある声で「いらっしゃいませ」と男たちを迎える光景は、もうどこの地方でも見られない。

しかし、かたちを変えて性産業は依然として続いている。厳しい取り締まりを受けても、地下河川のように地上から地下へと潜り込み、勢いが衰えずに膨らんでいる様子を見せている。つまり、一つの巨大な地下産業として成長しているのだ。

ウィーチャットで売春取引が可能になった

この変化には10年近くかかった。最大の理由は、中国で2000年からインターネット技術が急速に普及し始めたことにある。

「いらっしゃいませ」という女性の声は聞こえないが、性産業は見えないところで、ハイテクの力を駆使して勢いよく展開されている。

インターネット世界における性的取引は、基本的に発覚することは稀で、隠蔽性が非常に強い。SNSはその一例で、男女交際アプリを使えば、簡単に性的情報を発信できる。

さらに、ウィーチャット(LINEと同じ)を利用すると、2人だけの密閉された空間にいるため、詳細な性的取引が容易になる。このような「場所」では、売春行為の摘発はほぼ不可能だろう。

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写真=iStock.com/Urupong
ウィーチャットで売春取引が可能になった(※写真はイメージです)