台湾企業の撤退が始まった
ところが、2008年頃から風向きが変わり、台湾企業は苦境に立たされるようになった。台湾企業は撤退を始め、次々と東南アジアやインドへ工場を移した。
そのおもな理由は、次のようなものだ。
①労働力コストの増加。2007年に「中国労働契約法」が施行され、基本給が上昇し、福利厚生の基準も高まった。これは法律による強制実施であり、台湾企業にとっては製品コストの増加を意味した。1995年と比較して、コストは15倍に膨らんだ。
②外資企業に対する優遇税制の廃止。以前は外資企業の平均税率は13%だったが、新しい納税制度で本土系企業と同じ30%に引き上げられた。さらに、製品輸出時の税還付も17%から13%に引き下げられ、企業利益が減少した。
6000社あった台湾企業が4000社に減少
③人民元の切り上げによる輸出取引コストの増加。
④インフレーションによるコスト増。原材料や燃料の購入価格指数は2003年から28ポイント上昇したが、工業製品出荷価格指数は0.8ポイントしか上がらず、利益が減少した。
⑤ビジネス拡大への制限。土地使用(工業用地)が厳しく制限され、環境保護対策も企業に課される審査項目となった。
これらの理由により、台湾企業の撤退が加速し、2015年にはピークに達した。
台湾企業が集中していた広東省東莞では、かつて6000社あった台湾企業が2015年には4000社に減少し、製造業を中心に、破産や海外移転で3分の1が消滅した。
とくに電子業界で破産した会社が多かった。
台湾当局の統計数字によると、1991年から2022年までの対中投資金額は2033億ドルで、31年間で平均年60億ドルである。しかし、2023年の対中投資金額は、30億ドルにまで下がったという。