一般の宗教団体とカルトをわけるもの

元信者の証言にもあったように、エホバの証人の鞭打ちは相当に激しいもので、しかも、親たちは、子どもたちにより大きなダメージを与えるための工夫さえ施している。

エホバの証人の親たちも、最初は鞭打ちをためらうであろう。ためらいがあっても、子どもに鞭を当てることで、一つの困難な課題を克服したという達成感を得ることができる。

島田裕巳『日本の10大カルト』(幻冬舎新書)

人間は達成感を求める動物でもあるが、一度それを得ると、さらに大きな達成感を得ようとして、より過激な方向に進んでいくことがある。博打にのめり込んでいくのも、そうした心理のなせるわざである。

鞭打ちは身体的な行為であり、その分、困難なことをやり遂げたという感覚をはっきりと味わうことができる。そこから親は鞭打ちにのめり込み、子どもにより打撃を与える方法を模索するようになるのだ。

カルトと言われるような集団では、こうした達成感を得られる仕組みが備えられている。そこが、カルト性を弱め、社会に定着してきた一般の宗教団体との違いであると言える。

布教活動によって仲間を増やすことも達成感につながる。問題は、達成感が、本人にとっては満足できるものであっても、その結果が他者にとって好ましいとは言えないことである。

鞭打ちでは、子どもは犠牲者になる。だが、親の側は、達成感の虜になり、子どもに鞭を打ち続ける。そして、達成感を得たことで、本人の信仰は強化されるのだ。

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