男性も麦わら帽子や日傘を使おう
そして運動後にコップ1杯から2杯の牛乳を飲むことがポイント(牛乳が苦手な人はヨーグルトでもいい)。運動直後から1時間経過する頃までは、全身のタンパク質の合成が促進される状態が続き、牛乳に含まれるアミノ酸(タンパク質)の吸収がされやすい。特に肝臓では、アルブミンというタンパク質の合成が高まっているという。このタイミングでアミノ酸バランスが良い牛乳など乳製品を摂取すれば、アルブミンがたくさん合成される。
「アルブミンは血管内の水分を保持する働きがあります。ややきついと感じる運動を1日に15〜30分程度行い、その後牛乳を飲む。これを2週間くらい続けると、血液量が100cc程度増えるのです。少ない量に思われるかもしれませんが、これだけの血液量が増えると、皮膚血流や発汗などの体温調節反応が劇的に改善するのです。そして気温が体温よりも低い環境なら、皮膚血流を無意識に調節し、汗をかかなくても体温調節ができる体になります」(能勢氏)
熱中症患者は例年、梅雨明け後に救急搬送のピークを迎え、死亡者数も増えやすい。一方、暑い盛りの8月にはむしろ減少する。それは「暑さに慣れることに加えて、お盆休みで休息をとれるからではないか」と三宅医師は推測する。
「過労や睡眠不足に陥ると、自律神経の働きが低下し、若い人でも暑さに弱くなってしまいます。少しでも体調に不安のあるときにはくれぐれも無理せずに活動してください」
特に梅雨の晴れ間は要注意。できる限り体に日射が当たるのを避けよう。「人の体が熱くなる一番の原因は、日射です。ですから屋外を歩くなら、麦わら帽子や日傘を使用しましょう。これは男性であっても、です。次に気を付けるのは輻射熱。日射が当たった路面などによる照り返しで体に熱がこもります。そして3つめが気温、室温です」(三宅医師)
梅雨時期は気温に加えて湿度も高くなるため、汗が蒸発しにくく、体内に熱がこもりやすい。万が一、自分や周りの人に熱中症を疑う症状があった場合、涼しい場所に移動して三大局所(首の前面の左右、両脇の下、脚の付け根の前面)を冷やし、水分の補給を。
人にとって快適な環境を研究してきた、東京大学名誉教授でペアベール建築環境研究所所長の加藤信介氏は「夏場なら涼しい格好で室温25〜27度を保つことが、大半の人が快適と感じる、自律神経に負担のかからない環境です。湿度はこれから高くなりがちですが、本来50%前後に抑えたいところですね」と話す。室内ではエアコンの冷房を上手に活用したい。
近年は暑い期間が長引き、身体的・心理的負担が続く。負担を軽減するためにも、今は暑熱順化を行いながら体調を整え、夏日は休息をとって乗りきっていこう。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年6月14日号)の一部を再編集したものです。