「資金源の細分化」と「派閥の発生」

先にも述べたように、戦前から戦後にかけて、資金源は、大きく変貌した。その最大の理由は、軍と財閥の解体である。財閥もしくは軍を通じて、巨大なパイプで政党に流れ込んだ資金がなくなると、保守政党は、個々の何百という企業から、小口の献金を集めなければならなかった。各企業は、利権の還元を期待して、権力を掌中にする政治家や、近い将来に再びあるいは新たに権力を掌中にしそうな政治家に献金するようになった。

渡辺恒雄『自民党と派閥 政治の密室 増補最新版』(実業之日本社)

その中で、1億円前後の巨額の金(選挙の時には、1億以上数億円に達する)を集める能力を持った人物が、派閥の親分、いわゆる実力者と呼ばれる権力者になるようになったのである。ある派閥の親分の定期的に献金を受ける企業の数が、1000社に達する例もある。

もし、政治資金が合理化され、たとえば西ドイツのように、国費で負担するとか、あるいは、比例代表制の採用によって個々の議員の出費が少額ですむようになるとかすれば、資金パイプとしての派閥およびその親分の存在理由の大部分は失われ、少なくとも、今日の派閥の持つ機能および実力者の条件、資質は、まったく異なったものとなるであろうし、派閥間の密室政治の中から、実力者の合従連衡によって生み出されて来た総理大臣の性格も異なり、首相になる者の条件と資質は、すっかり変質することとなるであろう。

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