論文1本でも機能性表示食品ではOK

さまざまな機能性表示食品の届出情報を見ると、同様に安全性の根拠について「サプリメントとして販売してきたが、購入者からの情報を解析した結果、健康被害はない」と説明する製品が多数あります。当事者が「健康被害はない」と言い切っても、説得力はありません。

また、機能性の根拠についても、驚くほどレベルの低い製品がいっぱい。たとえば、摂取群と対照群(プラセボ群)を設定して比較しているものの、それぞれの群がたった4人しかいない、というような試験で「統計学的に有意な差があった」として、届出を済ませている製品があります。このような少人数で有意な差うんぬんを語るのは、科学的には意味がありません。

また、「研究レビュー」という方法を悪用していると見える製品も多数あります。機能性表示食品制度においては、機能性の根拠として、製品を摂取する試験結果だけでなく、論文のデータベースで機能性関与成分を検索し、それを解析して効果が認められれば、その関与成分を含む製品を届出してよい、という研究レビュー方式が認められています。

研究レビューは、多数の研究がさまざまな研究者によって行われ、レビューが公正中立に行われて「効果あり」となれば、信頼度の高いエビデンスです(図表1ではメタ解析・システマティックレビューとして最上位に位置づけられている)。

ところが、機能性表示食品においては、研究レビューをしたものの論文が1本しか採択されなかった、という製品がいくつもあるのです。つまり、その関与成分についてはほとんど、研究がなされておらず、1本しか論文がないのです。しかし、それでも機能性表示食品としてはOKです。

また、届出をする企業の社員がレビューを行い、その企業が出した論文一つを選ぶ、という「利益相反」の塊のような研究レビューが行われ届出されている製品もあります。

「血圧をグーンと下げる」は景表法違反

そもそも、機能性の根拠となる論文の質の低さについては、以前から繰り返し指摘があり、報道もされていました。

こうした問題を、消費者庁も気にしていたようです。2023年6月、機能性関与成分としてDHA・EPA、モノグルコシルヘスペリジン、オリーブ由来ヒドロキシチロソールを含み、「高めの血圧を下げる機能性サプリ」「血圧をグーンと下げる」「酸化LDLコレステロールを減少させる機能性取得」「中性脂肪を低下させる機能性取得」などと表示した2つの機能性表示食品について、景品表示法違反(優良誤認)として表示をやめるよう、事業者に措置命令を行いました。「表示の裏付けとなる合理的な根拠を有していない」と判断しています。

【画像2】消費者庁、景品表示法違反として措置命令を出した商品のウェブサイトなどにおける表示例 出典=消費者庁報道発表資料(別紙1)