頭のいい人ほど、すべてを自分一人で考えない

人間の思考や推論は、自分の立場や感情に驚くほど左右されてしまいます。たとえば、気分が沈んでうつ的になると、悲観的な推論しかできなくなってしまうのです。あるいは、自分の立場によって、自分に都合よく物事を考えてしまうことはよくあります。

こうした弊害をなくすために、自分のことを客観的に見つめることによって、推論をより正しい問題解決に近づけようというのが、「メタ認知」なのです。

このメタ認知を働かせて、知識が豊富で、幅広い推論ができ、その推論が自分の立場や感情に左右されていないかどうかまで客観的にチェックできる人が、正しい問題解決法を見つけられる「頭のよい人」といえます。

ただし、もう1つ重要なポイントがあります。それは、すべてを自分一人で考える必要はないということです。「わからないことは、自分よりよく知っている人に聞いてしまおう」というのも、頭がよいということの条件の1つといえるでしょう。

では、そういう「頭のよさ」が果たして受験勉強で身につくのかどうかということですが、私は身につくと考えています。

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受験勉強は社会に出てからも役立つ

受験勉強で必要なことは、知識の定着です。今日覚えたことを今日テストされるわけではなく、ずっと後になってテストされることになります。

したがって、できるだけ長期間知識を定着させ、それを必要なときにいつでも取り出せるように訓練をするのが受験勉強です。

これは、大人になってからの問題解決時にもとても重要な要素といえます。必要なときに、必要な知識が思い浮かばなければ、重要な意思決定を正しく行うことはできないからです。

受験勉強では、現実検討能力というものも養われます。たとえば、自分の志望校の出題傾向を分析して、どのくらいの点数が必要かということを検討する。

自分の得意科目が英語、苦手科目が数学だとすると、合格点までにはあと20点足りないから、この1年間で、英語を15点伸ばして、数学は10点アップさせようというような対策プランを立てる。そういった能力のことです。

私も受験生のときには、東大の過去の入試問題を研究して自分なりに、対策を立てました。当時の東大理IIIの合格者の最低点が440点満点中290点とされていましたので、私は最低でも合計290点は取れるように目標設定をしました。

ところが、私の場合は国語がいつまでたってもできるようにならなかったため、国語は80点満点中、漢字の問題で取れる4点に設定したのです。

その代わりに、残りの科目で286点取るという目標を立てました。そうすれば、どんなにコンディションが悪くても、理IIIに受かると見たのです。