不動産バブル調整のゆくえ

⑦今後、日銀の新しい不動産バブルに、調整は起きるのか

日本はもう20年以上もの長期にわたって金融緩和を続けている。

長短の金利はゼロ金利、マイナス金利へと向かった。日銀は世界で最も金利が低い世界を演出し、そこから脱する利上げの動きも、日本は主要国で最も遅い。

訪日客や外国勢による資産市場の好調を維持する点を考えると、2023年3月に政策金利を0%以上にした日銀は「できるだけ24年も利上げをしたくない、そして円安のままにしておきたい」のが本音だ。

現在の不動産と株のバブルも日銀が過激な金融政策で演出した帰結だが、それこそが「日銀バブル」だと判断されれば、お金が流れ込んだ不動産や株の価格は調整を受ける。

不動産価格と株価を上げている買い手の半数程度は外国人で、円安効果があって外貨ベース価格に換算すると「安いから」買っているにすぎない。

もし、為替が円高方面に触れて動かなくなれば、高級マンションの価格も下がっていく。

また、株も大幅な配当利回りの低下や将来的な業績不振が見込まれれば、下がっていく。

さまざまな尺度から調整の余地はあると言える。

⑧インフレ時代の住宅ローン戦略を、どうとらえるか

マンション1億円相場は、悪性インフレの懸念からも来ている。

金利について借入時に工夫すれば、インフレによってどんどん住宅ローンの返済負担が減り、インフレが住宅ローンを返してくれる。

政府が発行する債務である国債(10年ものが長期金利の指標)を債券市場からほとんど買い占め、1100兆円強の国債の発行残高の半分を超す600兆円規模を日銀が買ってしまった。

この歴史的な政府債務の日銀による買い上げなどを通じ、かつてないほどのマネーが民間市場に供給された。ゼロ金利解除後も、過去に日銀が買い込んだ国債、株、不動産(リート)はなかなか、日銀からは売れない。

今後の利上げは非常にゆっくりとなり、それは前例のないカネあまりと超低金利を生み、お金は資産市場に大量に流れ込んで、収益が見込めるマンションや優良株はどんどん値上がりした。

しかし、日本銀行券(お札、円)の価値は日銀の資産が健全でないと動揺する。そして、政府債務はどんどん累増している。

政府が税収をベースにしっかり返済していくことは、もはや不可能に近い。少子高齢化・人口減少は止まらないので、財政需要もどんどん増えていく。

本書を読めば、こうした既定路線の未来が予想できる。今後も政府の借金を日銀に押し付ける懸念が、じつは悪性インフレを予想させ、お金を優良不動産や株に変えようという動きが、すでに始まっているのだ。