心の動揺が災害を増幅する

最後に、メンタルの課題を指摘しておきましょう。生涯に初めてという規模の大地震に遭遇すると、誰でも気が動転します。ここで冷静な気持ちに戻れるかどうかが、サバイバルではキーポイントになるのです。

鎌田浩毅『首都直下 南海トラフ地震に備えよ』(SB新書)

動揺すればするほど通常の判断力を失い、時にはパニックに陥ります。たとえば、緊急地震速報を聞いたあとに、たくさんの人があわてて出口や階段へ殺到する行動が懸念されています。心の動揺が災害を増幅する、と言っても過言ではないのです。

パニックを起こさないためには、周囲の人に声を掛けてみることが大切です。知らない人でもかまいません。話をすれば少し心が落ち着き、次に何をすべきかが見えるでしょう。緊急時のこうしたコミュニケーションが、二次災害を大きく減らすことにつながるのです。

いざという時でもあわてず騒がない

東京都は防災ホームページの「帰宅困難者の行動 心得10か条」の中で、「あわてず騒がず、状況確認」「声を掛け合い、助け合おう」の2項目を挙げています。私の経験からも、緊急時に人と言葉を交わすことは、動揺を防ぐためにとても効果があると思います。

帰宅困難者の行動 心得10か条

1.あわてず騒がず、状況確認
2.携帯ラジオをポケットに
3.作っておこう帰宅地図(東京都防災マップを見る)
4.ロッカー開けたらスニーカー(防災グッズ)
5.机の中にチョコやキャラメル(簡易食料)
6.事前に家族で話し合い(連絡手段、集合場所)
7.安否確認、災害用伝言ダイヤル等や遠くの親戚(災害用伝言ダイヤル・災害用伝言板)
8.歩いて帰る訓練を
9.季節に応じた冷暖準備(携帯カイロやタオルなど)
10.声を掛け合い、助け合おう

※東京都防災ホームページより

緊急地震速報は、震源地と地震の揺れを感じる場所が遠ければ遠いほど、時間をかせぐことができます。つまり震源地が遠方の海域の場合、私たちが生活している陸域までかなりの距離があるので、速報を受けてから実際の大きな揺れが来るまでにいろいろな準備をすることができます。

しかし、もし震源が自分の真下の場合はそうはいきません。いま、心配されている首都直下地震のような場合です。P波とS波はほぼ同時に来てしまい、緊急地震速報が出てから実際の揺れが来るまでの時間はきわめて短いでしょう。

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