家事育児を当たり前にこなす男性陣

斎藤さんは育休からの復帰時に17時退社を決意、周囲に宣言した。この17時退社宣言が認められたのは、上司はじめ周囲の男性が家事や育児を妻任せにする昭和的価値観ではなく、男性であっても妻と協力して育児や家事を行うのが当たり前だという価値観を持つ男性たちだったということが、間違いなく大きい。その意味では男性も変わってきており、それが女性に人間らしい働き方を可能にしてくれたといえる。

「男性陣も、効率的に仕事をしたほうがいいに決まっています。私の効率的な働き方を、みんなの前で発表したこともあります。早く帰ることがネガティブではない、むしろ本来あるべき形だと思ってくれている環境が、本当に素晴らしいと思っています」

一般的に、斎藤さんの上の世代の女性たちは、自分や子どもに犠牲を強いて「男性並み」になろうとした。斎藤さんは「男性並み」にではなく、「唯一無二の自分」に主軸を置き、自身の価値から成果を出すことを、働く目標に据えた。

子育てはタイムリミットがあるから

斎藤さんが大事にする、子どもとの時間。今でも世の中ではワンオペ育児に疲弊する「働くママ」の声ばかり渦巻くのに、斎藤さんの思いは真逆だ。

「割と子どもが苦手でしたが、いざ産んでみると、もう、純粋に可愛くて。人への思いやりや、いろんなことを子どもから学ぶことが多く、子どもを持ったのは衝撃的な体験でした。育児にはタイムリミットがあるので、自分が後悔しないように一緒にいてくれる間は、そうさせてもらおうと。思う存分、子どもとの時間を楽しみ尽くしたいって思います」

撮影=プレジデントオンライン編集部
仕事をセーブしなければいけないフラストレーションから夫とギクシャクしたことも

現在、夫は海外に単身赴任中、ワンオペ子育ての日々だ。今になれば嘘のようだが、産後、夫との間にギクシャクした時期があった。

「夫はすごく協力してくれたのですが、私のほうが仕事をセーブしている不公平感があって、私がガミガミと言って、コミュニケーションがうまく取れない時期もありました」

二人は面と向かって話すのではなく、LINEで文字を通して思いを伝え合った。

「その時、私は自分のことばかり考えていたなと気づきました。夫を追い詰めていたと」

自分の非を認めるのは、なかなか難しい。なのに、斎藤さんは気づいたのだ。夫もまた、思うように育児に関われないことに葛藤を抱いていた。そして斎藤さんを追いかけるように外資系からサントリーに転職したのだった。

「主人が海外に行きたいという希望も、今度は私が彼の人生を応援しようと、後押ししたんです」