保育園から頻繁に呼び出し…でも「子持ち様問題」は起きなかった

「ビール部門は大変だと言われていたので、『ちゃんと仕事をしなきゃ』『みんなと同じくらい働かなきゃ』と気負って復帰したのですが、最初は保育園から頻繁に、呼び出しがありました。37度台の熱とかで。それが、1カ月くらい続きました」

斎藤さんは、頭を抱えるしかない。

「お迎えが頻繁にあって、途中で仕事をお渡しして帰ることもあったので、『私がいる意味って、あるのかな』『この仕事は自分でないほうがいいのでは?』と、葛藤ばかりでした」

保育園に預けて1カ月ほどは頻繁に呼び出しがあったと振り返る斎藤さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
保育園に預けて1カ月ほどは頻繁に呼び出しがあったと振り返る斎藤さん

そんな斎藤さんを救ってくれたのが、上司である課長の対応だった。

「課長がメンバーのみんなに、『子育てとは、こういうものだから』とメールをしてくれたんです。上司が寄り添ってフォローしてくれて、それがとてもありがたかった。周りも小さい子がいるパパが多くて、『逆に、すごいね。家に帰って、家事もして』って言ってくださって。前の会社なら、『自分の仕事は自分でなんとかしなければと思い込んでしまう』ような雰囲気がありました。サントリーは『基本、みんなでやろうよ』という感じで、楽しく仕事をすることができました」

今、SNSをざわつかす「子持ち様問題」は、斎藤さんの職場にはなかったわけだ。

「ただ、私も『子どもがいるから、仕方がない』『受け入れてくれて、当たり前』という気持ちではいけないと思い、常に感謝の言葉を口にしました。そういう環境にいられることに感謝を持って、仕事をしようと」

「量より質」の計り知れないプレッシャー

復帰当初の「みんなと同じように働こう」という気負いに、やがて変化が訪れた。

「物理的にそれができない、時間が取れない、全てをみんなと同じにできないってことがわかったんです。しかも、それを求められてもいない。『男性と、同じ量を働け』なんて、誰も思っていないことに気がついたんです」

その頃、上司から受けた言葉が、斎藤さんにとって大きな転機となった。

「斎藤さんの見方とか物事の捉え方は、斎藤さんにしかないものだから、それをもっと出していってほしい」

思いもしないアドバイスに、衝撃を受けた。

「ああ、そうか。他の人と同じような働き方ではなく、私らしい成果が求められているんだ。量ではなく、一つ一つの発言で気づきを与えるとか、私にしかできないことを発信するとか、そういうことが求められているんだと気づいたんです。量じゃなくて、質で返すというやり方もあるんだなと。じゃあ、そうしようって。質とは、私である意味です。ただ、質で返すとひと言で言ってもすごく難しくて、プレッシャーで、時に押しつぶされそうになりますが……」